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人生は旅。 
知らない街を歩いてみたい 
知らない海をながめていたい 
どこか遠くへ行きたい 
遠い街遠い海
夢はるか一人旅。

けれど、
遠くへ行かなくても旅はできます。

たとえば、
近所を散歩して知人に出会い
雑談するのも旅。
誰かに読んでもらいたくて、
こうやって文を綴るのも
私にとっては旅。

さて、どこまで放浪できるか ……






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 018  2019年11月06日

 必〇仕事人  〜プロ演奏者 村田隆子〜


 話は今から9か月前にさかのぼる。毎年2月11日に神戸市勤労会館で、難病支援のためのチャリティーコンサート(通称ミニコン)が開催される。毎回アマチュアの演奏家10組程度プロ1組がボランティアで出演し、私もマリンバ演奏で2度出演させていただいたことがある。今年はビデオカメラの撮影と映像の編集で関わらせていただいた。

 午前中の全出演者によるリハーサルが終わり、開場30分前に昼食を終えた私はカメラチェックのため、誰もいない薄暗い会場に入った。カメラをセットし暫くすると、地味な服装の小柄なおばちゃんが会場に入り、バイオリンを抱えておどおどとピアノのそばにやって来た。「あのおばちゃん、リハーサルに間に合わなかったので、今、音出しに来たな!」と私はそう思い、カメラチェックを続けた。やがてそのおばちゃんのバイオリンの音が鳴ったとたん、私の手が止まった!「上手い!素人のおばちゃんにしては無茶苦茶上手い!」バイオリンやクラッシックに疎い私でも、これが凄く上手な演奏であることは分かる。「腕がいいのか、バイオリンが上等なのか!会場が静かで他に音が無いせいか、薄暗いからか!」何が何だかよく分からず、バイオリンの音が鳴り終わるまでずっとおばちゃんの演奏を見ていた。その後おばちゃんは「すみません!」と言わんばかりに腰をかがめて小柄な体をさらに小さくして会場を出ていった。

 素人のおばちゃんでも、上手な人がいるんだなあ、あの人ならプロになれたかもなあと、私はその時、スーザン・ボイルの歌を初めて聞いた審査員の気持ちが分かったような気がした。
それからすぐに会場が明るくなりスタッフがたくさん入ってきてコンサートの準備を始めたので、私もカメラチェックを再開した。

 やがて本番が始まりたくさんの方達が演奏を披露され、最後のプロ奏者の演奏の時間になった。司会者が「お待たせしました、紹介します!バイオリニスト、村田隆子さんです!」大きな拍手に迎えられて颯爽と登場したのは、なんと!地味で小柄で目立たなかったが、やたらとバイオリンが上手だったあのおばちゃんだ!今度は真っ赤な演奏用のドレス、ヘアスタイルも化粧もバッチリ!背筋もピンと伸びて体が大きく見える!この人プロだったんだ!

 すぐに演奏が始まった!やっぱりそうだ!あの薄暗い会場でのあの音だ!私はカメラマンでありながらカメラのモニターも見ず、ズームも動かさず、ずっとそのバイオリンの演奏に目を奪われ、その音色に聴き入った。まさにプロの演奏とはこれか!私のマリンバの師匠の演奏を聴いた時以来の衝撃であった。

 私はこの日の村田隆子さんに、例えは悪いかもしれないが必殺仕事人の中村主水を連想した。普段は「昼行燈」と揶揄され出世などには縁の無い奉行所の冴えない同心。しかし裏の稼業の仕事人になると、冷徹で切れ味鋭く悪人どもをカッコよくぶった斬る、藤田まこと演じるあの中村主水である。本番演奏の仕事人村田隆子さんの颯爽としたカッコよさは今も鮮明に覚えている。

 コンサートが終わりスッタフの反省会に村田さんも出席いただいた時、彼女のコメントは短く控え目だったし、記念写真の時は後列の端にスタンバイ!「ゲストは前列の真ん中です!」と主催者に促されてやっと前列に来てくださるといった感じ。プロの演奏家とはみんな自己主張の強い人ばかりと私は思っていたが、こんなにも謙虚でそのお人柄が音色と共に伝わるプロもいるんだ、と認識を新たにした。と同時に大ファン(一目惚れ)になった。

 それ以来、村田隆子さんのコンサートを聴きに芦屋と神戸に2回足を運んだ。一緒に行った私の連れ合いももちろんファンになった。

 

 神戸在住、関西を中心に活躍するプロバイオリニストで、私が尊敬しかつ大好きな村田隆子さんは、放浪楽人のブログをいつも読んでくださり、必ずありがたい感想をくださる。  
最近では「いつもブログ楽しく拝見しています。ありがとうございます。打楽器奏者のご活躍の場が広がっていかれ、おめでとうございます。お忙しいですね。お身体に気をつけてお過ごしくださいね。
 この回の内容を事前に読んでいただいた時は「は は 恥ずかしいお言葉。お褒めいただき色々ありがとうございます。このままでよろしくお願い致します。」とメールをいただいた。謙虚で温かいお人柄がよく伝わってくる。私には身近な存在の凄いプロ演奏家である。

 「颯(さつ)」という漢字は、「風が吹くさま」という意味を表すという。私にとって村田隆子さんは、バイオリンの心地良い音色という風を、必ず吹かせてくれる「必颯(ひっさつ)仕事人」なのである!
 

  お知らせ 2020 初夏のチャペルコンサート
            5月9日(土)
         会場 日本キリスト教団芦屋浜教会
         出演 バイオリン 村田隆子  コントラバス 田中寿代
            ピアノ   武井泉