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人生は旅。 
知らない街を歩いてみたい 
知らない海をながめていたい 
どこか遠くへ行きたい 
遠い街遠い海
夢はるか一人旅。

けれど、
遠くへ行かなくても旅はできます。

たとえば、
近所を散歩して知人に出会い
雑談するのも旅。
誰かに読んでもらいたくて、
こうやって文を綴るのも
私にとっては旅。

さて、どこまで放浪できるか ……







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 029  2020年3月30日

 歌謡曲と私F 歌声喫茶で歌ったあの歌  〜北国の春〜


 1979年12月31日第30回紅白歌合戦、時刻は23時前、7年振りに(特別)出演し3曲メドレーを歌った美空ひばりの後、白組司会の山川静夫アナウンサー(紅組司会は水前寺清子)の声がNHKホールにこだました。
 「長い紅白歌合戦の歴史に素晴らしい金字塔を打ち立てました!3年連続同(おんな)じ歌!何ともしぶとい人です!これぞ東北人の持つ粘り強さ!千昌夫さん、北国の春!
 はたして、褒められているのか馬鹿にされているのか(笑)

 それまでの紅白で、都はるみは「北の宿から」を北島三郎は「与作」を2年連続で歌っている。それだけロングヒットになったわけだが、その年を代表するヒット曲を歌うのが原則だった当時の紅白でそれでも2年連続は異例だった。それを「北国の春」は3年連続というのだから異例中の異例。山川静夫がこう紹介するのも無理はない。まさに超ロングヒット。累計売上げは300万枚といわれている。
 その後の紅白でも千昌夫は、33回(1982年)40回(1989年)62回(2011年)の計6回「北国の春」を歌っている。
 「北国の春」は、都会で暮らす主人公が実家から届いた小包を受け取り、早春期の故郷や家族、かつての恋心などを想う内容の歌詞である。当時テレビの歌番組に出演する際千昌夫は演出として、古びたコートに帽子、丸縁眼鏡に使い込んだトランクを下げ、ゴム長靴、首には手ぬぐいを巻き、コートのボタンをひとつかけ違うというスタイルで歌唱していた。これは視聴者に親近感を持ってもらうためで、千昌夫が古道具屋で5万4千円払って仕入れたもの。



  師匠の遠藤実は「いくらなんでも、みっともないからそんなカッコはやめてくれ!」と反対したが、遠藤実の言うことには絶対服従だった千昌夫もこのアイデアには自信があり、「アイドルと違って、演歌勢はめったにテレビに出られないんです。たまに出演するときぐらいは目立たなくちゃ」と反対に師匠を説き伏せた。ミリオンヒットになった要因に、千のこのスタイルが影響したこともあり、後に遠藤実は「いや、恐れ入った。千はたいへん凄いプロデューサーだよ」と脱帽したという。
 タイトルにもある「北国」がどこを指しているか、具体的な地名は歌詞には登場しないが、作詞者のいではく(遠藤実の元秘書)が後に、自分の故郷(長野県南牧村)がある信州の情景を描いたと語っている。一方作曲者の遠藤実は、この詞をもとに自分の故郷(少年時代を過ごした疎開先)の新潟県をイメージして作曲したという。

   
       いではく                        遠藤実

 「北国の春」がヒットした1979年頃は、カラオケブームが始まった頃で、私もこの曲をよく歌った。遠藤実らしい日本人好みのシンプルなメロディーで、サビ(歌の盛り上がり)が始めと終わりにあり、歌っていて気持ちが良い歌である。
 この曲は千昌夫以外にもいろんな歌手にカバーされている。大川栄策藤圭子細川たかし美空ひばり八代亜紀氷川きよし桑田佳祐テレサ・テン等々、そうそうたるメンバーで、これを見ても国民的大ヒットであることがよくわかる。2010年にテレサ・テン文化教育基金が行ったテレサの曲のインターネット人気投票において、総得票数の49%(約982万票)を獲得して『北国之春』が1位となった。

 また、中国語・タイ語・台湾語・マレーシア語・広東語(香港)・チベット語・ベトナム語などの歌詞を付けた外国カバーバージョンが多数存在する。これに対して作詞者いではくは、若い頃いだいた「冒険家・登山家になる」自分の夢と照らし合わせ、「この曲が自分の夢を、代役として務めているような気がする」と語っている。鈴木明(作家・ジャーナリスト)の調べによると、中国を含めアジア圏で15億人に歌唱されているという。
 おそらくアジアで一番歌われている日本の歌なのであろう。作曲者の遠藤実は亡くなったが、幸い千昌夫は今も現役として元気に歌っているし、作詞者のいではくも健在だ。
 歌は国境を越えるという。千昌夫いではくを親善大使として、アジアの国々で「北国の春〜アジアの架け橋コンサート〜」を開催したらどうだろう。いではくの歌詞と各国の言葉で翻訳された歌詞の共通点や相違点を確認したら面白いだろうし、コンサートに集まったみんながいろんな国の言葉で合唱するなんてとても楽しそうだ。民族楽器での演奏があればさらに盛り上がる。故郷を想う気持ちは世界共通だ、きっと大人気になるだろう。
    

 各国の首脳(総理大臣・大統領)が集まっての豪華な食事会や、揃いの民族衣装を身に着けてわざとらしく握手をして記念撮影をする「なんとかサミット」よりずっと実のある平和外交になると思うのだが。
 さて、コロナウイルス騒ぎで何とも楽しくない憂鬱な今年の春。外に出られないのなら、自宅で「北国の春」を歌い聴きながら、故郷に、両親や兄弟姉妹に、初恋の人に思いを巡らせてみてはどうだろう。
では、千昌夫が歌う「北国の春」オリジナル盤、韓国のバイオリン奏者ジョ・アラムの演奏、藤圭子のカバー盤、3曲をお聴きください。

 



1 白樺(しらかば) 青空 南風    こぶし咲くあの丘 北国の
  ああ 北国の春           季節が都会ではわからないだろうと
  届いたおふくろの小さな包み    あの故郷(ふるさと)へ帰ろかな 帰ろかな

2 雪どけ せせらぎ 丸木橋     落葉松(からまつ)の芽がふく 北国の
  ああ 北国の春           好きだとおたがいに言いだせないまま
  別れてもう五年あの娘(こ)はどうしてる   あの故郷へ帰ろかな 帰ろかな

3 山吹(やまぶき) 朝霧 水車小屋  わらべ唄聞こえる 北国の
  ああ 北国の春            兄貴も親父(おやじ)似で無口なふたりが
  たまには酒でも飲んでるだろか   あの故郷へ帰ろかな 帰ろかな