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人生は旅。 
知らない街を歩いてみたい 
知らない海をながめていたい 
どこか遠くへ行きたい 
遠い街遠い海
夢はるか一人旅。

けれど、
遠くへ行かなくても旅はできます。

たとえば、
近所を散歩して知人に出会い
雑談するのも旅。
誰かに読んでもらいたくて、
こうやって文を綴るのも
私にとっては旅。

さて、どこまで放浪できるか ……







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 045  2020年11月26日

 追悼! 梓みちよ 2  
   恋を教えてもらった「渚のセニョリーナ(娘さん)」は、
   いつか憧れの「お嫁さん」になり、
   やがて「こんにちは赤ちゃん


 今年1月に亡くなった梓みちよ(76才)のことは第35話で紹介した。彼女のような大人の曲を歌う個性的な歌手なんて今はいないなあ、もう出て来ないのかなあと寂しく思ったので続編を書くことにする。



 1943年6月4日生まれ、福岡県福岡市出身。本名は林美千代(はやし・みちよ)。宝塚音楽学校在学中にオーディションに合格し、“ボサノバ娘”のキャッチフレーズで62年のシングル「ボッサ・ノバでキッス」でデビュー。翌年の「こんにちは赤ちゃん」のヒットで、第5回日本レコード大賞を受賞。NHK『紅白歌合戦』は69年まで7年連続出場を果たす。その後も「二人でお酒を」「メランコリー」などのヒットを放つほか、タンゴやシャンソンにも芸域を広める。


 渚のセニョリーナ  1967年6月発売  作詞:尾中美千絵  作曲:平尾昌晃

1 ヴェナスノーチェス セニョリーナ     月夜の晩だよ 出ておいで
  白い肌を金色に 染めて朝まで踊ろうよ   誰にも内緒で 誰にも内緒で
  ヴェナスノーチェス セニョリーナ     恋を教えてあげよう
2 ヴェナスノーチェス セニョリーナ     窓から静かに 出ておいで
  ふたりだけの入江には 青い小さな船もある 誰にも内緒で 誰にも内緒で
  ヴェナスノーチェス セニョリーナ     恋を教えてあげよう
3 ヴェナスノーチェス セニョリーナ     お家にお帰り 朝が来た
  月の夜に又会える 僕の夢だけ見ておくれ  誰にも内緒で 誰にも内緒で
  ヴェナスノーチェス セニョリーナ     恋を教えてあげよう
  恋を教えてあげよう  恋を教えてあげよう

 ヴェナスノーチェス セニョリーナとは「こんばんは!お嬢さん!」という意味のスペイン語らしい。作曲が平尾昌晃と知って正直驚いた。平尾が作った曲は、布施明の「霧の摩周湖」から必殺シリーズの主題歌とたいへん幅が広い。それでいてどの曲もメロディーはシンプルで覚えやすく歌いやすい。またどことなく物悲しい旋律が特徴的だ。この曲は平尾には珍しくラテン調だが、彼らしさがよく伝わってくる。






 お嫁さん  1967年2月発売  作詞:岩谷時子 作曲:宮川泰 

1  わからないの おしえて  いけないとき 叱ってね
   ためいきがでるほど    やさしいあなた
   あかねの雲流れる     ひぐれの空見あげて
   瞳をうるませる ときもあるの
   幼い日からあこがれた   その名かわいい お嫁さん
   お耳に口寄せて      甘く今日もささやく
   あなたがすきだから    お嫁に来たのよ

2  うれしいとき みんなで  かなしいとき ひとりで
   あなたのハンケチで    涙をふこう
   幅の広い背中に      私の夢あずけて
   この屋根の下で 暮して行くわ
   幼い日からあこがれた   その名かわいい お嫁さん
   この小さな指に      おもい刻む指輪
   ふたりだけが知ってる   すてきな言葉よ

 ヒットメーカー岩谷時子さんらしい繊細な歌詞で、まさに時代を感じる。男は男の価値観で、女は女の価値観で生きていた時代。「お嫁にいく」なんて言い方、今はしないよなあ。

これはフジテレビの連続テレビドラマ「お嫁さん」の主題歌で、梓自身がヒロイン役だった。「ためいきがでるほどやさしいあなた」は関口宏。 梓みちよ初の連続テレビドラマ主演だったが好評だったようで、以後シリーズ化される。設定を変え配役を変えて4年間にわたって第7シリーズまで続いた。
 設定や配役は変わっても、主題歌が表現するドラマのコンセプトは同じ。夫の愛情と周囲の善意に支えられて、若い「お嫁さん」が明るくけなげに新婚家庭を築いていくというもの。

 フジテレビ「お嫁さん」シリーズ 毎週水曜午後9:00〜9:30
 第1シリーズ 梓みちよ   関口宏
 第2シリーズ 東山明美   山本豊三 (主題歌:東山明美)
 第3シリーズ 尾崎奈々   平井昌一
 第4シリーズ 早瀬久美   田辺靖雄
 第5シリーズ 珠めぐみ   勝呂誉
 第6シリーズ 江夏夕子   松山英太郎
 第7シリーズ 結城三枝子  山内賢



 さて読者のみなさんは、7シリーズの中でどの女優のお嫁さんが気になるだろうか。第3シリーズの尾崎奈々は後に松竹映画の若手女優人気ナンバーワンになるので、梓みちよを除けばこの中の出世頭になるのかもしれない。しかし私の中で一番気になるのは第4シリーズの早瀬久美だ。彼女は当時16才。ドラマとはいえ、16才のお嫁さんなんてなんかドキドキする。
 3年後早瀬久美森田健作主演のドラマ「おれは男だ!」で森田(小林弘二)の相手役の女子高生吉川操を演じることになる。そうあの「吉川くーん」だ。お嫁さんの3年後が19才で高校生だなんて、もうなんか凄いとしか言いようがない。




 こんにちは赤ちゃん原曲 「俺が親父だ」 作詞 永六輔  作曲 中村八大

こんにちは赤ちゃん お前の笑顔   こんにちは赤ちゃん お前の泣き声
その小さな手 丸い目玉       はじめまして 僕が親父だ

こんにちは赤ちゃん お前の生命   こんにちは赤ちゃん お前の未来に
この幸せが 母さんの望みだ     はじめまして 僕が親父だ

二人だけの 愛のしるし       すこやかに美しく 育てと祈る

こんにちは赤ちゃん 頼みがあるんだ こんにちは赤ちゃん 時々は母さんと
ホラ二人だけの 静かな夜を     つくってほしい 頼むぜ赤ちゃん        おやすみ赤ちゃん 頼むぜ赤ちゃん  僕が親父だ

 この曲は元々、作曲家中村八大に長男の力丸くんが授かったとき、作詞家の永六輔がプライベートで贈った詩だったそうだ。中村八大いわく「永さんがお祝いに詩をくださって。本当はあの歌は、発表しない予定だったんです。だけど他の曲が間に合わなくて……(笑)」個人的に贈られた曲なので、発表時は詩が書き換えられたとのこと。
 まだ父親に威厳というものがあった時代の雰囲気が感じられる、少しユーモラスな味付けの永六輔らしい歌詞である。歌詞を母親目線に変えて「こんにちは赤ちゃん」と柔らかく表現し、20才の初々しい梓みちよに歌わせたことが大ヒットの要因だったかも知れない。
 では永六輔の歌で「俺が親父だ」」をどうぞ。