難波駅を出た電車がわずかに右にカーヴすると、つり革に掴まっていた男たちは一斉に右側の窓から外を見やった。
 ほんの一瞬、大阪球場のスコアボールドが見えるからだ。
 私の家は球場から1キロ以上も離れていたが、物干し場にあがると、観客のあげる歓声が風に乗って流れてきた。
 確かに昭和のある時代まで、私たちは「自分の五感で直接」社会の動きを感じとっていたのだ。                           






今日の特集

マッチョぶりを誇示する
世界の政治家たち












ドナルド・トランプ 編





【ワシントン共同】2019/11/28
トランプ米大統領は27日、チャンピオンベルトを腰に巻き、筋骨隆々の肉体を持つボクサーの画像を加工し、自分の顔に置き換えてツイッターに投稿した。米メディアによると、米俳優シルベスター・スタローン氏を一躍有名にした映画「ロッキー」シリーズで演じたボクサー、ロッキー・バルボアの画像を使った。
何の説明もなく画像だけが投稿され、米メディアでは野党民主党による弾劾調査に打ち勝つ意思の表明、健康不安説を打ち消す狙いなどさまざまな臆測が飛び交った。
「妄想」「ナルシシズム(自己愛)」と指摘する声も出た。





【ワシントン共同】2020/05/06
トランプ米大統領は5日、西部アリゾナ州の医療用マスク工場を訪れた際、マスクを着けずに視察して回った。現場には着用を求める注意書きがあったが、工場側が必要ないと伝えたという。ただ米メディアによると、従業員らはマスク姿で作業していたといい、新型コロナウイルスの感染拡大防止を呼び掛ける指導者として不適切との批判を受けそうだ。
トランプ氏は視察の際、目を保護する透明なゴーグルだけ着けて、同行者もマスクは未着用だった。視察後の演説時もマスクを着けなかった。





【CNN】2020/08/19
トランプ氏、アリゾナで集会
移民政策の成果を強調
「バイデン氏は国境を完全に撤廃しようとする急進左翼の手先だ。壁を壊したがり、国境などいらないと考えている」
「この中は50度もある。試練を受けているようなものだ。バイデン氏にこれができると思うか。私は思わない」












ウラジーミル・プーチン 編





柔道着のプーチン
黒帯である。
確かに、西欧人によくある「腰高」ではない。




裸で乗馬のプーチン
わざわざ脱衣する意味が不明である。




冷水用浴するプーチン
確かに、周りは雪景色。
がまん会サークルのPRかしら。




メルカリに出品されていいた
プーチン写真集




何と、2枚組である。
売る人もあれば、
また、買う人もあり。











毛沢東 編





長江で泳ぐ毛沢東
73歳ぐらいの頃。
ニコニコ動画には、この動画がアップされている。ぜひご覧になってください。




今度は、立ち泳ぎ。




同じ場面をカラーにしてます。
フォトショなんか無い時代だから、手間がかかったでしょうね。



高嶋航さん(たぶん京都大学の先生だと思う)が、
『文化大革命と毛沢東の水泳』という文章を書いておられる。
ネット上で読めるので、これもご一読をお勧めします。
下の写真と文章は、そこから戴きました。

1966年7月16日、武漢に滞在中の毛沢東は長江を泳ぎ下った。7月25日、長江を泳ぐ毛の写真と長江大橋を背景に船上で白いガウンを着て手を振る毛の写真が『人民日報』の第1面を飾った。7月28日、吉林省四平市の中学生張新蚕はこの知らせを聞いて、心から毛主席の長寿と健康を祝福しつつ、日記にこう記した。毛主席という方は、なんと人民を熱愛し、人民に関心を寄せておられるのでしょう。私たちが「毛主席万歳」と呼ぶと、あの方は「人民万歳!」と返される。あの方はなんと謙虚なのでしょう!人民は永遠に毛主席と革命の道を勇躍前進しよう!
連日のように『人民日報』に掲載された水泳関連記事は、毛が泳いだことを耳にした人々の反応と各地での水泳の実践に大別される。 人民の声で一番多いのは、毛の健康に対する喜びだった。ここから、人々の関心(というより不安)が毛の身体(健康)に向けられていたことがわかる。毛が本格的に文革を発動するに当たって長江で泳いだのは、そうした人々の関心に応えるためであった。





現在でも、毛沢東記念水泳大会、というようイベントが続けられている。やってるのは爺さんばかりみたいだけれど。




これが、日本の新聞に報じられたもの。毎日の紙面だが、朝日も同じ写真を使っていたらしい。




こちらが、フェイク・ニュースではなく、本当の毛沢東の死亡記事。
1976年9月9日であった。長江水泳の10年後、田中角栄との対談の4年後である。





毛沢東長江水泳のインパクトは相当なものだったようで、思わぬところまで影響を与えている。
Max Roach(ドラムス)とArchie Shepp(サックス)が、"FORCE"という2枚組アルバムを作ってます。
1976年のリリースというから、毛沢東の追悼アルバムなのでしょうか。3面を使って『毛沢東組曲』が吹き込まれている。私は知らなかったのだけれど、けっこう有名なアルバムらしい。今度、聞いてみよう。それにしてもマックスは活躍した時代が長いなあ。











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「安倍首相、お疲れ様!」という欺瞞
    『コロナ・パンデミックから何を学ぶか?』 その7
                   (2020年09月01日)


 安倍晋三が総理大臣を辞任するそうだ。
 理由? 持病の悪化だって。


病気を理由に職を辞する、ということは …… 、


 体調の悪化を理由として職を辞するやり方は、我が国ではごく一般的である。最も常套的で、かつ穏便な方法であろう。「穏便である」とは、どう言うことか。
 勤め人が会社や役場を辞めるとき、たいていは多くの不満を内にかかえている。給与・待遇、上司の態度・能力、組織の方針、等々について。だが、それが明言されることはない。願いの文面にはただ、一身上の都合により、とだけ書かれる。書面が提出されるときに、実は体調も思わしくなくて、という一言が口頭で付け加えられる。
 辞表を受理する側も、辞めると言う人物には、欠点やら失敗やらその人格、立ち振る舞いに至るまで、言いたいことが多々あっても、この一言を黙って聞く。心中はどうであれ、それは残念だ、体調が悪いのならしかたがない、ゆっくり静養したまえ、また機会があれば、などと今までの労苦を労ってみせる。
 こんな風に、体調の悪化を理由として職を辞するやり方は、いらぬ波風を起てることなく、雇用・被雇用の関係をやんわりとデフォルトに戻す。つまり、体調の悪化を理由とすることは、お互い相手の非を咎めあうことなく雇用契約停止に至りましょう、という条件提示なのだ。こう言われれば雇用側も、黙ってこの条件提示をのむ。

 ただし、この人物がとんでもない「お騒がせ人間」であった場合には事情が違ってくる。
 その無分別な振る舞いの数々で、さんざん波風を起て、風雨いまだ収まらず、あたり一面、混乱・混濁のまま、という状態の場合はそうはいかない。こんな場面で、体調を理由に辞めると言いだせば、それは、責任回避のための居直り行為と解釈される。辞めるのは君の勝手だが、不品行の後始末ぐらいはきちんと済ましてからにしろ、と一喝されるだろう。
 すなわち、お騒がせ人間が、体調不良を辞職の理由に持ち出せば、余計な波風が起つのである

 今回の安倍君の辞任は、まさに、この場合にあたる。
 ましてや彼は、組織体の責任者。それも中小・零細の平取(ひらとり)・部課長クラスではなく、国家権力の最高責任者、日本の公人の最終上昇形態である、政府与党総裁、内閣総理大臣なのである。一個人であって一個人ではないのだ。


誰が、安倍健康不安説を流布させたか? 


 7月の終わりごろから、ネット上では、ちかごろ首相はまったくやる気を失っている、もう辞める気なのだろう、すでにその機をうかがっているのではないか、という観測が数多く見られるようになった。これらの多くは、安倍君に対して批判的な意見を述べてきた人たちから出されたものである。これは下衆(げす)の勘繰りなどではない。臨時国会開催の要求に応えず、引きこもったまま。官邸に出向いても、一時間やそこらで、そそくさと帰ってしまう。記者会見もまったく行われない。これでは、首相の言動を論評できない。論評の対象となる「首相動静」が無いのだから。当然、ダラダラ続く引きこもり状態を「観測」することとなる。
 確かに、モリ・カケに続いてサクラであれだけ叩かれて、すでにフルボッコ・破れサンドバッグ状態だったのに、そこへコロナ騒動。だが「お仲間政治」の度が過ぎて、まわりに実務能力のある人材が一人もいない。当然、何ら実効力のある対策も打てず、無理矢理実施に移してもトラブル続き。散発的な対策も、「贔屓筋」(ひいきすじ)や「お仲間」への便宜を図っただけの事と、ことごとく批判され、支持率ガタ落ち。さらにここに来て、コロナ感染に第二波襲来の兆し。頼みのトランプだって、今度は負けそう。もう、辞めたがっているんだ、やっぱりね。

 だが、それと併行して、安倍の周辺からは、総理は疲れておられる、少し休まれてはどうか、という発言が目立つようになる。

 ずいぶん疲れておられるなということで心配で、総理休まれた方がいいですよと申し上げた。
  (8月12日;甘利明自民党税調会長)

 あなたも 147日間休まず働いてみたことありますか? ないだろうね、だったら意味分かるじゃない。 140日休まないで働いたことないだろう。 140日働いたこともない人が、働いた人のこと言ったって分かんないわけですよ。
  (8月17日;麻生太郎財務相、記者団に対して)

 何よ、これ?
 ここでよく確認しておこう。私たちはいつの間にか、安倍晋三は体調を崩しているらしいという情報を周知の事実としていたが、それは何によって、だったか?
 ニュース・ソースは、マスコミのスクープではなかった。『フライデー』の隠し撮りでも、『文春砲』の炸裂でもなかった。ましてや、大手マスコミの報道でもなかった。言うまでもないが、彼らは、公式発表以外のことを一切報道しなくなって久しい。
 安倍の健康不安という「事実」は、安倍周辺の政府中枢の人たちによって、「ささやかれた」ものだった。何と、政府中枢が情報リークしたのである。それをマスコミが拡散した。

 これは極めて奇妙な事実である。
 しかも、これはおかしい、奇妙である、と指摘する声も聞いたことがない。


トップの健康不安は、極秘事項のはず


 これは変だろう。一般的常識の逆ではないか!
 大きな組織のトップに健康不安があるとき、この事実は隠されるのが普通である。正式に公表すべき時が来るまでは、徹底的に隠蔽される。当たり前だろう。巨大組織トップの健康不安は、外部に与える影響が大きすぎるからである。だから、組織はウソをついてでも、トップが健在であることを証明しようとする。健康・健在を証明するに止まらず、異常なまでに「超人的健康さ」を誇示しようとする。トップの健康不安を煽りたてるのは、敵対勢力の方であるに決まっている。

 これは、例を挙げるにもその選択に迷うほどの、「当たり前過ぎる常識」である。

 トランプは、自らの高齢を棚に上げ、バイデンはさらに高齢でオレのようにタフではない、と攻撃している。つい先日も、コロナ感染が危惧されるなか、アリゾナかどこかの灼熱の地で集会を行い、こんな過酷な条件の場所には、バイデンは来ることも出来ないだろう、ワッハッハ、と豪語した。もちろんマスクなしで。

 プーチンは、よほど自信があるのだろう、柔道着を着たり、もろ肌脱いで馬に乗ったり、トランプとは逆に氷点下の戸外で水に浸かったりして、マッチョぶりをアッピールすことに余念が無い。写真集まで出していて、何と、わが日本の "mercari" にも出品されていた。売り切れました、とあるが、一体誰が買うのだろう?

 古い話で恐縮だが、1966年、毛沢東は武漢付近の長江で泳ぎ、その映像を中国全土にばらまいた。その後、北京に乗り込み、あの文化大革命をおっぱじめたのであった。彼は1893年の生まれであるから、その時は73歳ぐらいのはず。この映像は日本にも伝えられ、駅売りの夕刊紙が一斉にデカデカと写真を掲げていた。その頃、夕刊紙はネタに困ると、「毛沢東死亡!」というプロレス活字を一面トップに貼り付けた。読んでみると、最後が「毛沢東死亡か?」で終わるガセネタであることが分かるのだが、こんな風に日本の夕刊紙は、何度毛沢東を殺したのか数え切れない。だから、毛沢東長江水泳の写真を入手すると、今度は、これは毛沢東のソックリさんであるとか、いや毛沢東に違いないのだが、もっと若いときの映像であるとか、その真偽の検証(これも何の根拠もなかった)を記事にしていた。政治的に言えば、毛沢東が実際に長江を泳いだのか否かは、実はどうでも良いことなのである。毛沢東のタフネスぶりを宣伝材料として文革が始まった、ということこそ押さえてくべきポイントであろう。

 安倍君の場合は、さほど強健ぶりを誇示していたわけではないが、それでも、プロゴルファーを同伴させてトランプとゴルフをすること、および、その様子がニュースとして伝わることに、無上の喜びを感じていたように思える。調べてみたら、トランプ氏とは、相手国訪問時の忙しい合間をぬって都合5回、プレーをともにしている。時差の問題もある。並の体力じゃ出来ませんよ、これ。ふだんから安倍君は、ゴルフの回数が多すぎることを皮肉られていたようで、「平均すると月1回以上のペース」(産経)とか、「首相の年末、連日のゴルフ 18年は14回目に」(日経)、とか、盟友であるはずの新聞社にもからかわれていた。さすがに今年は回数が減っているようだが、これは、体調の問題ではなく、自粛のポーズを強いられていたからに相違ない。夏休みにはぜひ軽井沢へと意気込んでいる、という記事を読んだのは、ごく最近のこと(7月だったか)。体調が …… 、だなんて、ウソみたい。


政権中枢が目論んだこと


 許せ、長い脱線。話を元へ戻そう。

 普通、大きな組織の重要人物に健康不安が生じた場合、組織の中枢はそれを隠そうとする。「指揮官の主導力の衰えという事実」より、「指揮官の主導力が衰えたのではないかという疑惑の拡散」を恐れるからである。だが、今回の場合、政権の最高責任者である内閣総理大臣の不調を、他の誰でもない、政権中枢の人間がリークした。これは尋常ではない。
 ここに、安倍辞任というプロセスをどのように誘導したいかという、現政権中枢の思惑が露骨に見て取れる。だが、どのメディアも「この点がおかしい」という指摘をしなかった。公式発表された内容を鸚鵡返しに伝えることに慣れきってしまって、事態を観察し判断する能力を失ってしまったのか、それとも、現政権中枢の思惑に予め同調してしまっているのか、サッパリ分からない。
 簡単な話である。現政権中枢の思惑と何か? をまとめてみよう。
 
 甘利と麻生のつぶやきを、もう一度読んでみていただきたい。一見すると、二人は、安倍総理の体調を気遣っているかのよう見える。友人の罹病を気遣う心優しき男たちの発言のように見える。だが、はたしてそうだろうか。

 どんなに馬鹿なように見えても、人格的にもクズ男であっても、彼らが政治家であり、それも保守・与党の政治家として、権力の最高地点まで上り詰めた "精鋭たち" であることを忘れてはならない。
 安倍が28日の会見を予告した直後、麻生はさっそく東京都内の中華料理店で麻生派の幹部連中と会食をもっている。他の実力者たちとその会派の動きも同様である。彼ら "重鎮・実力者" たちは、死に体になっている安倍のことなど、すでに眼中にないのだ。安倍の辞任劇が、安倍個人にとって、どんなに悲惨なものになってもかまわない、ただ、それが、国民の「自民党そのものへの愛想尽かし = 自民党の支持率低下」に繋がってはならない彼らの懸念は、ただこの一点にある。
 現首相の辞任とは、 "重鎮・実力者" たちにとっては、決して困難な局面ではない。逆に、自分と自分の会派が政権の座に今一歩近づくための、時機到来のチャンスなのだ。この時、現首相の辞任がごたついて、「保守自民党そのもの」に対する国民の支持が低下すれば、自分たちのもくろみは根底から崩れてしまう。

 では、そうならないためには、どうすれば良いのか?
 放っておけば、マスコミ・世論は当面、「安倍政治8年間の総括」に向かうだろう。だが、安倍政治8年間の功罪は、与党のオレが見たって「未解決の罪」の部分が多すぎる。いつまで、モリ・カケ・サクラの追及をしているのだ、という民衆の飽きやすさに便乗した世論誘導と、時間経過による緊張の風化によって、やっと臭い物にフタができた状態なのに、「安倍政治8年間の総括」となれば、またぞろこれが復活するだろう。
 そこで考え出されたのが、「安倍首相、お疲れ様 キャンペーン」である。
 安倍さんは、働きすぎなのだ、病気なのだ。みんな良識ある大人だろう。今は、何も言わず、何も咎めず、ご苦労さま、ゆっくりご静養ください、と言ってあげよう。


 勿論、このキャンペーンは不自然である。違和感がプンプンと臭ってくる。反安倍派からは、異議が噴出するであろう。でも、それでいいのだ。「安倍首相、お疲れ様」派と「安倍政権の8年とは、いったい何だのか?」派が、新聞やブログで入り乱れて口論をはじめる。それをネット・ニュースが拡散する。こうして「安倍政治8年間の総括」そのものは宙に浮き、国民の分断だけが進むのである。


橋下徹です。安倍首相、お疲れ様! その1


 この食いたくもないキャンペーンに、真っ先に食らいついたのが、ナニワの無節操男、橋下徹である。

【中日スポーツ】8/28(金) 19:25
〔見出し〕橋下徹氏 安倍首相の辞任会見でのメディアの対応に憤慨「お疲れ様でした、と1人の記者しか言わないが、あんなものなんですか」
〔本文〕 元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏(51)が28日、フジテレビ系「Live News it!」に出演。持病の悪化を理由に辞任を発表した安倍晋三首相(65)の会見で質問したメディアに対し、「冒頭『お疲れ様でした』と1人の記者しか言わないが、あんなものなんですか」とかみついた。
 会見の中継後にコメントを求められた橋下氏。「(メディアは)厳しく言うところは厳しく言えばいい」と前置きした上で、「7年何ヶ月総理されて病気でこうなっていたというところに関しては『お疲れ様でした』と言ってもいい」と主張した。さらに、自身の政治経験に基づき「僕は大阪ではばんばん記者とけんかしたけど、指摘を受けて改めるところは改めた。記者もちゃんとやったところは評価してくれた」と、メディアと政治の関係性について語った。
 橋下氏の意見には、テレビプロデューサーでタレントのデーブ・スペクター氏もツイッターを更新して同調。「橋下徹が夕方のニュースでいい事を言った! 批判は当然あるだろうだけど、なんで誰も安倍総理に一言『お疲れ様』的な敬意の言葉を言わないのか。ごもっとも」とつづった。


 安倍の辞任会見は「首相官邸」のホームページに、動画と文面がアップされている。動画は1時間と少しの長さである。橋下が、この動画を観たのか、それとも文面を読んだのか、それともニュースが報じた抜粋で済ませたのか、そこがよく分からないのだが(別に、どっちでもイイんだが)、会見全体を見ての意見が、メディアの記者に対する憤慨だけだったのだとしたら、彼の論理性と感受性がまず疑われるだろう。橋下君、君、安倍の述べた会見内容そのものには、何の疑問も、怒りも、賛同も、感じなかったのかね? あるいは、記者との質疑応答の中にも、心に引っ掛かるものが一つもなかったのかね?
 私は、とうてい安倍の話に1時間も聞き入る気にはなれないから、文面を最初から読んで行ったのだが、辞任の件に先だって述べている「夏から秋、そして冬の到来を見据えた今後のコロナ対策」のところで、もうストップしてしまった。煩瑣になるが、そのあたりを全部コピーしよう。


確かめた? 安倍辞任会見とは、どういうものだったか。


 冬に向けてはコロナに加え、インフルエンザなどの流行で発熱患者の増加が予想されます。医療の負担軽減のため、重症化リスクの高い方々に重点を置いた対策へ今から転換する必要があります。まずは検査能力を抜本的に拡充することです。冬までにインフルエンザとの同時検査が可能となるよう、1日20万件の検査体制を目指します。特に重症化リスクの高い方がおられる高齢者施設や病院では、地域の感染状況などを考慮し、職員の皆さんに対して定期的に一斉検査を行うようにし、高齢者や基礎疾患のある方々への集団感染を防止します。医療支援も高齢者の方々など、重症化リスクの高い皆さんに重点化する方針です。
 新型コロナウイルス感染症については、感染症法上、結核やSARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)といった2類感染症以上の扱いをしてまいりました。これまでの知見を踏まえ、今後は政令改正を含め、運用を
見直します。軽症者や無症状者は宿泊施設や自宅での療養を徹底し、保健所や医療機関の負担軽減を図ってまいります。コロナ患者を受け入れている医療機関、大学病院などでは大幅な減収となっており、国民のために日夜御尽力いただいているにもかかわらず、大変な経営上の御苦労をおかけしております。経営上の懸念を払拭する万全の支援を行います。インフルエンザ流行期にも十分な医療提供体制を必ず確保いたします。以上の対策について順次、予備費によって措置を行い、直ちに実行に移してまいります

  …… 目指します
  …… 見直します
  …… 図ってまいります
  …… 万全の支援を行います
  …… 必ず確保いたします
  …… 直ちに実行に移してまいります
 
 相変わらず、 …… します、 …… します、の行列。
 します、します、出来たらいいな、出来ないだろうな、チャン、チャン!


橋下徹です。安倍首相、お疲れ様! その2


 これに対し、記者たちが、「この期に及んで、何の具体性も、実行に対する裏付けもない、きれい事の羅列ですか!」と突っ込まなかっただけでも、記者たちは十二分に我慢強く、礼儀正しいと思う。それに加えて、「総理、お疲れ様でした、と言え」というのは、会見全体を浪花節にせよ、という命令である。記者諸君は、そこまでの感覚不全症候群に陥ってはいないだろう。不服なら、橋下は番組で『仰げば尊し』でも歌えば良かったのだ。もしヨシモトの芸人などを並べていた番組だったとしたら、全員、感涙にむせんだことだったろう。

 橋下の発言は、フジテレビ系の番組においてであった。それを、多くのスポーツ新聞が記事にし、それをネットのニュース・サイトがコピペして、さらに拡散した。このシークエンス、偶然にしては出来すぎではないか。

 今の政治勢力情勢を冷静に眺めてみよう。
 公明との連立与党に往事の勢いすでに無く、自民党は勢力補填の必要に迫られている。一方、橋下維新の方は、チラ・チラと与党批判はするものの、もうぼちぼち政権政党の仲間に入れてもらっても良いではないか、ええ仕事しまっせ、というアッピールを怠っていない。そこで、「安倍首相、お疲れ様 キャンペーン」の旗振り役を、橋下が承った。まぁ、こんな図であろう。
 見ていてごらん、野党再編と平行して、維新の連立与党への参加が進むから。これ、野党としても、再編するにしても何の政策的独自性も出せないから、維新と手を切る、我々は維新とは別、というイメージに依存するしかない、という事情があるのだろう。


同調する日本国民


 誠に残念なことに、我が日本国民は、易々とこの「安倍首相、お疲れ様 キャンペーン」に同調している。

 戦争に負けても、原爆を落とされても、原発が爆発しても、年金が目減りしても、この国の国民は、「何故そうなってしまったのか?」と問うことをしなかった。身に被った災難を、国民共通の歴史認識に昇華させることに不得手であった。

 今回も同様である。
 大ざっぱな話になるが、わが日本は、バブル経済崩壊以後、新自由主義とグローバリズムの空騒ぎによって、徐々に国力を衰弱させてきた。その総仕上げをしたのが安倍晋三である。彼の最大の「功績」は、実質経済の最終的破壊と全階層総貧困化の完成である。それに加えて、教育と文化の水準を貶め、その代償物として、マイノリティや他民族に対するレイシズムを煽りたてた。もう、良いところは何もないのである。
 だが、その安倍がとうとう行き詰まって、自ら辞めると言いだした。しかし、今度も、彼が先頭にたち、政府・与党がしてきたことを「歴史的に総括」しようとはしない。何故そうなっしまったのか? とは問わない。

 その代わり、安倍首相、お疲れ様、の唱和なのである。第2次大戦後の民主主義万歳唱和は、その後、それに魂を入れるという後工程が続いた。
 だが、今回の、「安倍首相、お疲れ様」の唱和は、空念仏に終わるしかない。


最後に、


 もし、安倍が、総理という職責からくる心労でもって病を再発させたのだと言うのなら、その心労とは、コロナ・パンデミックなど、国民が直面している諸困難に対する対策が上手くいかなかったことに起因するものではなかったはずだ、と反論しておこう。
 彼は、他の政府・与党の連中同様、コロナ感染など、まったく気になどしていない。その証拠に、安倍の辞任会見があった後、彼らは何に執心しているか? コロナそっちのけの権力獲得工作ではないか。
 安倍が気に病むことがあったとするなら、それは、次の二点。

1、お仲間の一人であった河井克行(彼は、ネトウヨ向けカストリ雑誌に、「安倍総理こそノーベル平和賞だ」という文章を書いている)と、その妻河井案里が、東京地検特捜部に逮捕されたこと。防御壁として働いた黒川弘務も退職して、勢いづく東京地検が、続いてこの安倍を標的にするのではないか、という恐れ。

2、すべてにおいて後ろ盾にしているトランプが、次の選挙では勝てそうにはないこと。



さらに、


 安倍の気晴らしは「外遊」と「会食」だった、という指摘がある。
 それが、コロナ騒ぎ(安倍にとっては、せいぜい「騒ぎ」であろう)で、自粛を強いられているので、気晴らしができなかった。これが、不調の原因! よく分かるね、この説は!

 それで思い出すのが、緊急事態宣言の発せられるよりはるか以前のこと、2月28日の国会総務委員会で、野党某議員の "T" (この男も、そうとう恥ずかしい男なので、伏せ字にしておく)が、次のように質している。"T"議員のホームページからコピペする。

 数えてみると、2月12日から昨日まで、平日11日のうち9日間、マスコミ、経営者、与党国会議員と会食している。2月12日には既に 200人の感染者が出ていた、その日からこれだけ会食するのはちょっと異常だ。今民間企業は飲み会を自粛している。せめて今後、会食を自粛する考えはないか。

  "T" 議員は、ここに記するのもはばかれるような不品行で、所属の党派から除籍処分を受けているが、ここで述べていることは極めて真っ当なことである。これに対し、安倍君が、ご指摘の通り、いささか度を超したかな、とも反省しております、時節がら今後は控えめにするよう心がけます、と常識どおりに答えたのなら、それで済む話である。
 何故なら、会議室や応接室ではなく、物事が決まるのは宴席である、というのが、良くも悪くも日本の風習なのだから。
 だが安倍君はこう答えた。

  "T" 議員は少し勘違いをされている。会食というのは、別にいわゆる宴会をやっているわけではなくて、さまざまな方々と意見交換を行っている。

 大笑いである。
 金美齢や櫻井よしこ、それに百田尚樹が会食の相手なら、いまさら「意見交換」でもあるまい。単に、私設・公設とりまぜて、安倍応援団の慰労会だろうが。
 また、あるいは、麻生・菅・甘利、あたりとなら、ふだんからずっと一緒だろ。おそらく、昭恵婦人と一緒の時間より長いのじゃないかな。彼らとなら、国会や官邸などでいくらでも「意見交換」の機会が持てるはずだ。麻生さんちょっと、甘利くん時間あるかな、と声をかけ、空いている部屋に入るだけのこと。わざわざ、フレンチなら「オテル・ドゥ・ミクニ」へ、寿司なら「銀座・すきやばし次郎」まで、出向く必要がどこにある? もっとも、こっちの方も目的は「意見交換」ではなく、腹の探り合いなのだろうが。

 試みに「安倍晋三 会食」で検索してみたら、あるわ、あるわ、日経やら時事ドットコムの「首相動静」からデータをとって「安倍晋三君の会食実績」をズラリと並べた、ツイッターやら何やらかんやらが。それを眺めると、 "T" 議員のいう「平日11日のうち9日間」というのは、恣意的なデータ選択ではなかったと思える。
 一例だけ、リンクを貼っておこう。『首相会食日誌』というツイッター・アカウントである。去年の6月までの会食実績がズラリとならびます。安倍君の食欲嗜好につき合わされるのはまっぴら御免だが、このツイッター・アカウントに出てくるお店の名前を、最初の方だけ(現在に近い方を)列挙してみよう。

キャピトルホテル東急の「オリガミ」、
ホテルニューオータニ大阪、
大阪迎賓館、
リーガロイヤルホテル大阪、
神宮前の鉄板焼き店「表参道うかい亭」、
渋谷のフランス料理店「ロアラブッシュ」、
東京・銀座のステーキ店「BLTステーキギンザ」、
ANAインターコンチネンタル東京内の日本料理店「雲海」、
プリンスパークタワー東京内の中国料理店「陽明殿」、
ホテルグランドパレスの日本料理店「千代田」、
赤坂のリッツ・カールトン東京内のフランス料理店「アジュール フォーティーファイブ」、
紀尾井町の日本製鉄紀尾井ビルディング内の「紀尾井倶楽部」、
京橋の焼鳥店「伊勢廣 京橋本店」、
西原の中華料理店「ジーテン」、
帝国ホテル、
パレスホテルの「萩」、
六本木の炉端焼き店「六本木田舎家 東店」、
「赤坂飯店」、
赤坂のしゃぶしゃぶ「古母里」(こぼり)、
内神田の「UZU」、
etc, etc, …… 、

 すごいね、これ。1ヶ月と少しだよ。これ以外に、官邸にも客を招いて会食してます。細かいことを言うようだが、安倍君、自腹を切っているわけじゃないだろう?
 そうか、安倍君、ずぅぅぅーーーっと、コレ、やってたんだ。

 そうか、安倍晋三て、単なる「遊び人」だったんだ。
 レイシストの皮を被った遊び人。(安倍晋三の最終定義)

 これで、この男の正体がハッキリと分かったわ。
 何が、安倍総理、お疲れ様、だ。あほくさ。
 太田胃散でも飲んで、屁ぇこいて、寝ろ。


  −−【その7】了−−  



   
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