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人生は旅。 
知らない街を歩いてみたい 
知らない海をながめていたい 
どこか遠くへ行きたい 
遠い街遠い海
夢はるか一人旅。

けれど、
遠くへ行かなくても旅はできます。

たとえば、
近所を散歩して知人に出会い
雑談するのも旅。
誰かに読んでもらいたくて、
こうやって文を綴るのも
私にとっては旅。

さて、どこまで放浪できるか ……






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  022  2019年12月30日

 歌謡曲と私D  〜小笠原優子の歌で聴く名曲選〜


 「フォレスタ」は、BS日テレ(BS日本・こころの歌 毎週月曜日夜7時から放映中)に出演しているコーラスグループで、メンバーは全員音大卒の声楽家達である。曲目選定および演出により、女性コーラス・男性コーラス・混声コーラスと自由に組み合わせが出来る。



 私は、メンバーの中で小笠原優子がイチオシ(大好き)なのである! 小笠原優子といっても、ほとんどの方は知らないと思うが、彼女は「フォレスタ」の女性パートのリーダーで、とにかく歌が上手なのだ。音大卒業なのだから、声が良くて歌が上手いに決まっているのだが、彼女の場合、声楽家特有の癖がなく、歌謡曲を素直に表現出来るいわゆる「歌心」があるのだ。小柳ルミ子・森昌子・石川さゆり・岩崎宏美と通じるものを感じる。若い頃は教育テレビの「ふえはうたう」で、歌のお姉さんをしていた。
 今回は彼女が番組の中で、センターとして歌った3曲を紹介する。 




 「津軽のふるさと」(1953年 米山正夫作詞作曲 美空ひばり歌)

  りんごのふるさとは 北国の果て うらうらと山肌に 抱かれて夢を見た
  あの頃の想いで ああ 今いずこに りんごのふるさとは 北国の果て

  りんごのふるさとは 雪国の果て 晴れた日は晴れた日は 船が行く日本海
  海の色は碧く ああ 夢は遠く りんごのふるさとは 雪国の果て

  ああ 津軽の海よ山よ いつの日もなつかし 津軽のふるさと

 
   

 私にはこの歌詞から、1枚の絵画が想像できる。
この曲は美空ひばりが主演した映画「リンゴ園の少女」(1952年)で歌われた。同映画で歌われたもう1曲「リンゴ追分」は日本民謡調であるのに対し、「津軽のふるさと」は壮大なクラッシックの世界観がある。美空ひばりは15歳にして、民謡調もクラッシックも歌いこなし、映画の主演もした。まさに不世出の天才だ。
 この曲は現在もいろんな歌手がカバーしている。美空ひばりにいちばん近いのは天童よしみ、ひばりを超えるかもと思うのは、島津亜矢。もし興味があれば是非聞き比べてほしい。

北の宿から」(1975年 阿久悠作詞 小林亜星作曲 都はるみ歌)

  あなた変わりはないですか  日毎寒さがつのります  着ては貰えぬセーターを
  寒さこらえて編んでます   女心の未練でしょう   あなた恋しい 北の宿

  吹雪混じりに汽車の音   すすり泣くよに聞こえます お酒並べてただ一人
  涙唄など歌います      女心の未練でしょう   あなた恋しい 北の宿

  あなた死んでもいいですか  胸がしんしん泣いてます 窓にうつして寝化粧を
  しても心は晴れません    女心の未練でしょう   あなた恋しい 北の宿


   

 都はるみの代表曲で、1976年レコード大賞をはじめ主な音楽賞をほぼ独り占めし、美空ひばりと島倉千代子の二人でずっと独占してきた紅白歌合戦の紅組トリを飾った曲である。
 まあ裏を返せば、この76年はこれ以外ヒット曲が無かったのかも?(「およげ!たいやきくん」「木綿のハンカチーフ」「春一番」等あったが)トランペットのニニ・ロッソも12月の日本でのコンサートでこれを歌っている。イタリア人の歌う演歌はやっぱり違和感があり笑えたが。
 また、「どこまでも行こう」「この木なんの木気になる木」など数々のCMソングのヒットメーカーであり、「寺内貫太郎」でも有名になった小林亜星が都はるみの歌を作曲したという意外性もあった。
 阿久悠の書く、「着ては貰えぬセーターを編んでいる」「汽車の音がすすり泣くように聞こえる」「窓にうつして寝化粧をする」という歌詞から、頭に映像が浮かんできて、当時20歳の私は「女の怖さ」を感じずにいられなかった。
 
風の盆恋歌」(1989年 なかにし礼作詞 三木たかし作曲 石川さゆり歌)

  蚊帳(かや)の中から花を見る 咲いてはかない酔芙容(すいふよう)
  若い日の美しい私を抱いて欲しかった  しのび逢う恋 風の盆

  私あなたの腕の中  跳ねてはじけて鮎になる
  この命欲しいなら いつでも死んでみせますわ 夜に泣いてる三味(しゃみ)の音

  生きて添えない二人なら  旅に出ましょう幻(まぼろし)の
  遅すぎた恋だから  命をかけてくつがえす  おわら恋歌 道連れに

   

 富山県のひなびた町・八尾(やつお)の伝統行事「おわら風の盆」を背景とした、「津軽海峡冬景色」「天城越え」と並び称される石川さゆりの名曲である。「おわら風の盆」は毎年9月1日から3日間、越中おわら節の哀調を帯びた旋律に合わせて、坂の多い町中を町衆が無言のまま踊り続けるという独特の祭りだ。
 1番の「若い日の美しい私を抱いて欲しかった」は、映像こそ浮かばないが、まるで小説の行間を読むかのように主人公の人生を想像させられる、哀しく切ない歌詞である。
石川さゆりは89年の紅白で、自身初の大トリをこの曲で飾っている。


 5月から始めました放浪楽人も今年はこれが最後です。「こんなブログおもろないぞ!止めてしまえ!」というお叱りの声も無く、皆さんに支えられ励まされながら何とか22話までたどり着きました。ありがとうございます。来年も頑張りますのでよろしくお願いします。

 では、上の3曲をフォレスタの小笠原優子の歌でお聴きいただきながら今年はお別れです。どうかよいお年をお迎えください。