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生まれ
 1948年(昭和23年)
 ベビーブームの真っただ中
生活エリア  
 大阪 奈良 京都
趣味等
 本を読む事、
 音楽を聴く事
 (クラシック,ジャズ,中島みゆき)、
 山歩き、テニス、バイク、等






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  №032 2021/07/31

 “樹木たちの知られざる生活” ペーター・ヴォ―ルレーベン著



 コロナ感染拡大で街へ出かけなくなり1年半、気分転換に住宅のはずれの雑木林を散歩することが多くなった。歩いている時、樹木などあまり気にせずに通過するだけだったが、『樹木たちの知られざる生活』を読んで雑木林の木や枝ぶりを見るようになった。



















 ♠♠ 木の言葉 ♠♠ 
 
 コミニケション出来るのは人間だけだと思っていたが、木々も自分を表現する手段を持っているらしい。それが芳香物質、香り。

 アフリカのサバンナで観察された出来事、キリンたちがアカシアの葉を食べると、葉を食べられたアカシアは災害が近づいていることを、周りの仲間に知らせるために警報ガス(エチレン)を発散、警告された木々は有毒物質を準備し始める。それを知っているキリンは警告の届かない場所の木へ移動する。香りのメッセージは風に乗って伝わるので、キリンは数本とばして100メートルぐらい先のところで食事再開する。

 同じようなことはブナ、ナラ等も、自分がかじられると痛みを感じ、毛虫が葉をかじると、かまれた部分の組織が変化し、人体と同じように電気信号を走らせる。人間の電気信号は1000分の1秒ほどで全身に広がるが、樹木の場合は1分で1センチしか進まない。さらに葉の中で防衛物質を集めるまで1時間ほどかかるといわれている。

 木の根も森林の地下ではかなりの活動を行っているらしい、先の早期警報も科学物質も根を通じて連絡、さらに電気信号も使われているようで、秒速1センチ、クラゲやミミズと同じ速度で刺激の伝達しているものもある。情報を受け取った周辺のナラは、いっせいにタンニンを木の体内に巡らせる。また、森の地中での情報伝達には木の根から土の中の菌類の細い菌糸のネットワークが、インターネットの光ファイバー網のような役割を担っているという。森の土、ティースプーン1杯の中には数キロ分の菌糸が含まれ、ひとつの菌が数百年の間に数キロメートルも広がり、森全体に網を張るほど成長し、この菌糸のケーブルが情報網になっているらしい。まだ、どんな情報が流れているかは分からない、これからの研究になるだろう。



















 ♠♠ 森の空気 ♠♠ 

 森の空気は健康に良い、森に入り新鮮な空気を吸ってリラックスする。実際には広葉、針葉等の森林がフィルターの役目をして、除去される物質の量は1平方キロメートルにつき年間7000トンにもなり、街より澄んだ空気にしている。また樹木により芳香物質やフィトンチッド等も加わり、特に針葉樹林は空気中の菌などを減らす作用がある。

 また森の空気は酸素を豊富に含んでいる。日中だけで1平方キロメートルにつき1万キログラムの酸素が木々から放出、人間は1日1キロ弱の酸素を必要なので1万人分の酸素が作られる計算に、森を散策することは酸素のシャワーを浴びることになる。ただし、散策は日中が良い、夜木々は光合成等を休むので、二酸化炭素の放出が行われる、酸素の量が減るのだ。

 この本を読むまで、木々がコミュニケーションを取っているなんて想像もしなかった。また脳のような機能もあるらしい…

 しかし、考えてみれば人間は自分の身体のことも、ほとんど分かってない。人の身体は約270種類、60兆個の細胞からでき、腸内細菌等は約100兆個存在していると言われているが全く意識せずに生きている。樹木は寿命も何百年単位なので人間よりも長生き、優れた英知を持っているのかも… 人類は木を利用してきたが、木の言葉、生態等はあまり考えて来なかった。

 森林、樹木について改めて考えさせてくれる本である。