profil

人生は旅。 
知らない街を歩いてみたい 
知らない海をながめていたい 
どこか遠くへ行きたい 
遠い街遠い海
夢はるか一人旅。

けれど、
遠くへ行かなくても旅はできます。

たとえば、
近所を散歩して知人に出会い
雑談するのも旅。
誰かに読んでもらいたくて、
こうやって文を綴るのも
私にとっては旅。

さて、どこまで放浪できるか ……







【放浪楽人】Topへ


【有朋自遠方来】Topへ


【一握の知力】Topへ












































































































     一つ前の記事へ

    次の記事へ   

 035  2020年4月23日

 追悼! 梓みちよ   〜乃木坂のいい女は、
 「メランコリー(憂鬱)」な気持ちを抱えながらも、
 恨みっこなしの別れをした相手とたまに「二人でお酒を」飲み、
 結局「売れ残ってます」〜


 

メランコリー 1976年9月21日発売  作詞 喜多条忠  作曲 吉田拓郎

緑のインクで 手紙を書けば    それは さよならの 合図になると
誰かが 言ってた         女は 愚かで かわいくて
恋にすべてを 賭けられるのに   秋だというのに 恋も出来ない
メランコリー メランコリー    それでも 乃木坂あたりでは
私は いい女なんだってね     腕から 時計を はずすように
男と さよなら 出来るんだって  淋しい 淋しいもんだね

人の言葉を しゃべれる鳥が    昔の男(ひと)の 名前を呼んだ
にくらしいわね          男は どこかへ 旅立てば
それでなんとか 絵になるけれど  秋だというのに 旅もできない
メランコリー メランコリー    それでも 乃木坂あたりでは
私は いい女なんだってね     恋人つれてる あの人に
平気で 挨拶しているなんて    淋しい 淋しいもんだね
淋しい 淋しいもんだね

 作詞の喜多条忠といえば、かぐや姫「神田川」キャンディーズ「やさしい悪魔」などで有名。出だしの「緑のインクで手紙を書けば それはさよならの合図になると 誰かが言ってた」は斬新でカッコいい!脚本家の中園ミホが書く自立する女・自己主張する女「やまとなでしこ」「ハケンの品格」「Doctor-X」の主人公のような女性がまだ珍しかった時代、従来の作詞家の書く曲とは切り口が随分違って、とてもお洒落だ。
 作曲の吉田拓郎は、自身が歌うヒット曲も多いが、他の歌手に提供する曲もまたヒットさせる。今で言うなら、桑田佳祐・松任谷由実・中島みゆきといったミュージシャンの先駆者のような存在だ。由紀さおり「ルームライト」森進一「襟裳岬」かまやつひろし「我が良き友よ」それから、浅田美代子「じゃあまたね」なんていう歌もあった。

 この曲は歌詞の変化に合わせ曲調が変わり、繰り返しが無くてお洒落だ。また、短調から長調へ転調するのもカッコいい。

 梓みちよはこの曲をパンツルックで歌うことが多く、ズボンのポケットに手を入れながらの立ち姿はお洒落でカッコいい!また、彼女はバイセクシャルをほのめかす発言を、テレビやステージで行っている。「男を愛するように、女も愛せる」そんな彼女の魅力がこの曲には溢れているように思う。





二人でお酒を
 1974年3月25日発売  作詞 山上路夫  作曲 平尾昌晃


うらみっこなしで 別れましょうね  さらりと水に すべて流して
心配しないで 独(ひと)りっきりは 子供の頃から なれているのよ
それでもたまに 淋しくなったら   二人でお酒を 飲みましょうね
飲みましょうね

いたわり合って 別れましょうね   こうなったのも お互いのせい
あなたと私は 似たもの同志     欠点ばかりが 目立つ二人よ
どちらか急に 淋しくなったら    二人でお酒を 飲みましょうね
飲みましょうね
どうにかなるでしょ ここの街の   どこかで私は 生きてゆくのよ
それでもたまに 淋しくなったら   二人でお酒を 飲みましょうね
飲みましょうね



 梓みちよは、「こんにちは赤ちゃん」のヒット後に相当悩んだという。真面目で愛らしい八重歯が魅力の清純派イメージで売り出された自分と、本来ちょっとやんちゃで不良であった自分とのギャップに。
  「こんにちは赤ちゃん」から11年後、床にあぐらで座り込んで歌う「二人でお酒を」が、清純派からお色気を感じさせる大人の女への脱皮を成功させた。この歌うスタイルはカッコいいと評判になった。これは「女があぐらをかいて歌ってみたらおもしろそう」という梓自身の提案による演出である。コンサートで試したところ、笑い声や驚きの声が聞こえ手ごたえを感じたという。この曲のヒットで5年振りに紅白復帰を果たす。
 「二人でお酒を」「メランコリー」で魅せる梓みちよの、確かな歌唱力・表現力や歌う時の姿勢の良さは、宝塚音楽学校で身に付けたものだろう。

 さて「梓みちよを脱皮させる」新しい曲作りを託された作り手の二人。作詞の山上路夫は数日間考え続け、結局「酒好きのらしい、お酒を飲む女性像が一番」と考えた。演歌歌手ではない梓に酒の歌を歌わせることはためらいもあったが「新局面を開くには冒険も必要」と割り切った。梓自身も「酒好きの自分にぴったりでうれしかった」とすぐに気に入ったという。
 平尾昌晃の作曲は、ベニーグッドマンに代表されるスイングジャズをベースにし、大人の雰囲気を醸し出していてお洒落だ。ディキシーランド・ジャズの名曲「ワシントン広場の夜はふけて」に曲調が似ている。(真似したかな?)また、欽どこのわらべが歌う「もしも明日が」も雰囲気が似ている。(真似されたかな?)

売れ残ってます  1970年9月発売  作詞 増永直子  作曲 鈴木 淳

売れ残ってます わたし   けれどもとてもしあわせ
恋の痛みも知らず      たのしく送る毎日よ
自由が両手にあふれているわ 恋するチャンスはいつもあるの
売れ残っててもいいの    涙の恋はいらない
その気になればできる    欲しくないだけ今はまだ

売れ残ってます わたし   けれどもすべて知ってる
恋はいつかは冷める     涙の終わり来るものよ
結婚しても相手にいつか   だまされ泣かされ悔やむものよ
売れ残っててもいいの    夢見る方がたのしい
その気になればできる    したくないだけ今はまだ

こんなにいつも待っているのに  どうして一人も気づかないの
売れ残ってます わたし     誰にも言わないけれど
淋しい想いするの        枯れないうちに 咲かせたい

 50年前、「夜のヒットスタジオ」という番組で、前田武彦が笑いながら曲紹介をし、梓みちよが少し照れながら歌っていたのを覚えている。今の時代の感覚では、タイトルも歌詞の内容も問題だらけで女性蔑視も甚だしい。テレビで歌うとかCDを発売する以前に、企画の段階で間違いなくストップがかかる。
 歌詞に出てくる「わたし」を男だと解釈しても、現代なら通じるだろう。でも50年前「売れ残り」は、明らかに女性を意味していた。
 梓みちよこの時27歳、確かに売れ残っていた?紅白も落選した!間もなく俳優の和田浩治と結婚し、1年後離婚する。

 鈴木淳作曲のメロディーは明るく軽快で親しみやすいのだが、今後この曲が日の目を見ることは無いだろう。

 では以上の3曲、全て梓みちよのオリジナル盤でお聴きください。