有朋自遠方来 放浪楽人(さすらひのがくと)
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人生は旅。
知らない街を歩いてみたい
知らない海をながめていたい
どこか遠くへ行きたい
遠い街遠い海
夢はるか一人旅。
けれど、
遠くへ行かなくても旅はできます。
たとえば、
近所を散歩して知人に出会い
雑談するのも旅。
誰かに読んでもらいたくて、
こうやって文を綴るのも
私にとっては旅。
さて、どこまで放浪できるか ……
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053 2021年1月30日
大阪に次いで奈良においても、昨年12月5日に「三池闘争に学ぶ奈良のつどい〜60周年記念〜」が行われ、私はその事務局の一端を担った。12月には田原本吹奏楽団のウインターコンサートもあったので、11月から12月にかけて私には今年一番の忙しさだった。
ともかく奈良のつどい実行委員会のみなさんのおかげで、準備万端無事当日を迎えることが出来た。
それはプログラム1部の映画「ひだるか」の上映が終わった昼休みだった。私のところに見知らぬ男性が現れ「ミナトです、よろしく!」と挨拶された。私は「ああどうもご苦労様です。前の席が空いていますので、どうぞ!」と席を勧め、その男性には気にもかけずプログラム2部3部のスケジュールを確認していた。
すると、実行委員会の委員長・頑固一徹(がんこいってつ 仮名 70才代)さんが慌てた様子で私の前にやって来た。「放浪楽人さん、今の人が港監督や!」「ええっ!あのスーパーマリオのお父さんみたいな人が、映画ひだるかの脚本・監督の港健二郎さん?!」
その時2つの事が同時に脳裏をかすめた。時を戻そう!
10月17日大阪阿倍野で行われた、三池闘争60年シンポジウムin関西でも映画「ひだるか」が上映され、映画上映後、港監督と主演の岡本美沙さんの舞台挨拶があった、私は監督を初めて見て「映画監督というよりは時代劇に出てくる、凄んでいるが真っ先に主人公に斬られる悪役の浪人」という印象を受けた。
港監督は、おしゃべりが上手でしかも中身が分かりやすい。当初私は主演女優を見るのが目当てだったのだが、監督のソフトな語り口に魅せられてしまい、岡本美沙のことはどこかへ飛んでいってしまった。
日本の映画監督といえば、例えば、何でも自分の思いを通してしまうワンマン黒澤明。演技指導はしないで、徹底して役者を追い込むサド的な溝口健二。独特の映像美を追求する変人市川崑。そのワンパターンがはまればその世界観に魅了される好々爺小津安二郎。社会のタブーに挑戦してきた激情タイプ大島渚。穏やかな物腰で、一代記を得意とする女形木下恵介。
有名な映画監督は、このようにワンフレーズ語られることが多い。港健二郎監督は、明るくて親しみやすく、どこの近所にもいる世話好きのおじさんといった感じだった。
12月4日奈良のつどいの前日、実行委員長の頑固一徹さんから電話があった。「放浪楽人さん、えらいこっちゃっ! 港監督が明日奈良のつどいに来られる予定やって!」
「何をしに?」 「分からへん!」
その時私は監督に怒られるかもしれないと思った。怒られる理由はここでは書けないが・・・
「困ったなあ。でも大丈夫。あんな忙しい人、何百人対象の大阪ならともかく、50人規模のしかもこんな奈良の田舎にわざわざ来るわけがない!」
とは言ったものの、もしかしてという不安はあった。明くる日その不安は的中したのだ。
話は12月5日に戻る。私は港監督のところへ慌てて走っていった。「先ほどは失礼しました。港健二郎監督ですか?」すると監督は立ち上がり「はい、港です。今日は映画ひだるかを上映してくださってありがとうございました。」と深々と頭を下げられた。
「ワインを飲んでいる時に撃たれるイタリアのマフィアの親分」のような港監督に、絶対怒られると思っていた私は意外な展開にもう「びっくりぽん!」(朝ドラ・「あさが来た」の主人公白岡あさの口癖)状態で、監督の謙虚な姿を前に恐縮してしまって暫く言葉が出なかった。
ちなみに「あさが来た」でも、九州の炭鉱が描かれていた。
それから5分ほど話をさせてもらった。10月17日に監督の話を聞いてそのお人柄に親しみを持ったこと、「ひだるか」を3回観たが、その都度新しい発見がある名作であること、子どもの頃からの無類の映画好きで、こうやって映画監督とお話が出来ることをたいへん光栄に思っている、そんなことをしゃべったように思う。緊張していたのでよく覚えていない。
有難いことに監督はずっと笑顔で聴いてくださっていた。
2部が始まり、港監督から会場のみなさんにご挨拶をしていただき、また討論の場でも監督自ら挙手をして参加してくださった。もちろんお話は上手なのだが、お話の中からお人柄が滲んでくるので、すんなりと気持ちよく内容が入ってくる。
やがてつどいが終了、ゲストと実行委員会のメンバーで懇親会があり、もちろん監督も快く参加してくださった。12人の参加だった。その中で監督はまさに自然体で偉そうにせず誰とでも親しく話をしていた。
生来疑い深い私は、「このおじさん、本当にこんないい人なのか? 映画監督なんて本来海千山千のはずなのに。演技をしているのかもしれないぞ?」と思い、監督を試してみたくなった。ちょっとしたいたずら心なのだが。
「監督! 監督の家に遊びに行っていいですか?」と言ってみた。さすがに「あつかましい!」と怒るかもしれない。
一瞬その場が凍り付いたように感じた。参加者は全員まず私の顔を見て、それから監督の顔にその視線が移った。
続きは次回で!
と思ったが、やっぱり続きを書く。
監督はにっこり笑って、「ああいいですよ、放浪楽人さんは面白い人だ、映画の話をゆっくりしましょう!ハハハ !」
ほんまかいな?何という懐の深い人だろうとびっくりして感心して、嬉しくなった。
この続きは次々回で!
この第53話をアップする前港監督に読んでもらった。すぐこんな返事が返ってきた。
面白いですね。笑ってしまいました。今、花岡事件のドキメント映画企画書執筆で追い込まれていましたが、心が和みました。本当にありがとうございます(^o^)
どこまでも心優しい、太っ腹で前向きな港監督であった。
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読者のみなさんからのレビュー(感想) 第51話「映画 ひだるか2」
ひだるかの詳しい内容や人物像のお話をありがとうございました?
皆様の感想も興味深く拝見しました???続きが楽しみですね??
(村田隆子さん バイオリンプロ演奏家)
ひだるかの話は昔九州でそんなことがあったのかと、驚きました。経営者側と労働組合、死亡者まで出すことになっていたんですね??各々に言い分があるでしょうが、長い年月お金と人が動いたんですね。いつの時代でも、このような戦いは繰り返されるんでしょうね。
(コンサドーナさん 60才代女性)
またまた難しい??ただところどころ入っている写真、北の国からの純や松山恵子、イラストなどに感心してます。 (プルメリアさん 70才代女性)
ありがとうございます!皆さんの感想も嬉しいですね。早速、関係各位に送付させて頂きます。
(港健二郎さん 映画監督・脚本家)
映画のことも気になりつつ、それよりも、たくさんの方が放浪楽人さんの文章のファンなんだなあと、そっちの印象のほうが強く心に残りました〜(笑)
先週末は暇だったので、たくさん映画を見て、本を読みました。リフレッシュ!
(安永早絵子さん 第46話で紹介 打楽器プロ演奏家)
いつも、深い細かいコメントに感心します。港監督の思いもよく把握してますね。次の映画が楽しみです。また第三弾「ひだるか」書くのですね。次回ブログを楽しみに待ってます。
(頑固一徹 がんこいってつ さん 70才代)
頑固一徹さんは私が20代の頃からいろいろお世話になっている先輩です。その人脈の広さには圧倒されます。まさに信念の人、ぶれない生き方の人です。
あの人って誰だろうと想像すると、二人浮かんできた。しかしどちらも大物過ぎて遠い存在、とても無理。だからその正体を知るのが楽しみです。
北の国からの純、家売るオンナの三軒家万智、おけいちゃんだから松山恵子、懐かしの歌手から最近のドラマまで、例えが素晴らしく豊富。
部長刑事の入川保則、若大将の澄ちゃんこと星由里子、びんびん物語の校長佐藤允、みんな知っています、懐かしいです。みんな亡くなりましたが。
(中年ジェットさん 50才代男性)
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読者のみなさんご感想ありがとうございました。次回54話は久しぶりにレビュー特集をします。テーマは「逃げ恥スぺ」と「パルナス」です。まだ間に合いますので、どうぞ感想を送ってください、お待ちしています。
あの人 港健二郎 古都奈良に、只今見参 !
大阪に次いで奈良においても、昨年12月5日に「三池闘争に学ぶ奈良のつどい〜60周年記念〜」が行われ、私はその事務局の一端を担った。12月には田原本吹奏楽団のウインターコンサートもあったので、11月から12月にかけて私には今年一番の忙しさだった。
ともかく奈良のつどい実行委員会のみなさんのおかげで、準備万端無事当日を迎えることが出来た。
それはプログラム1部の映画「ひだるか」の上映が終わった昼休みだった。私のところに見知らぬ男性が現れ「ミナトです、よろしく!」と挨拶された。私は「ああどうもご苦労様です。前の席が空いていますので、どうぞ!」と席を勧め、その男性には気にもかけずプログラム2部3部のスケジュールを確認していた。
すると、実行委員会の委員長・頑固一徹(がんこいってつ 仮名 70才代)さんが慌てた様子で私の前にやって来た。「放浪楽人さん、今の人が港監督や!」「ええっ!あのスーパーマリオのお父さんみたいな人が、映画ひだるかの脚本・監督の港健二郎さん?!」
その時2つの事が同時に脳裏をかすめた。時を戻そう!
10月17日大阪阿倍野で行われた、三池闘争60年シンポジウムin関西でも映画「ひだるか」が上映され、映画上映後、港監督と主演の岡本美沙さんの舞台挨拶があった、私は監督を初めて見て「映画監督というよりは時代劇に出てくる、凄んでいるが真っ先に主人公に斬られる悪役の浪人」という印象を受けた。
港監督は、おしゃべりが上手でしかも中身が分かりやすい。当初私は主演女優を見るのが目当てだったのだが、監督のソフトな語り口に魅せられてしまい、岡本美沙のことはどこかへ飛んでいってしまった。
日本の映画監督といえば、例えば、何でも自分の思いを通してしまうワンマン黒澤明。演技指導はしないで、徹底して役者を追い込むサド的な溝口健二。独特の映像美を追求する変人市川崑。そのワンパターンがはまればその世界観に魅了される好々爺小津安二郎。社会のタブーに挑戦してきた激情タイプ大島渚。穏やかな物腰で、一代記を得意とする女形木下恵介。
有名な映画監督は、このようにワンフレーズ語られることが多い。港健二郎監督は、明るくて親しみやすく、どこの近所にもいる世話好きのおじさんといった感じだった。
12月4日奈良のつどいの前日、実行委員長の頑固一徹さんから電話があった。「放浪楽人さん、えらいこっちゃっ! 港監督が明日奈良のつどいに来られる予定やって!」
「何をしに?」 「分からへん!」
その時私は監督に怒られるかもしれないと思った。怒られる理由はここでは書けないが・・・
「困ったなあ。でも大丈夫。あんな忙しい人、何百人対象の大阪ならともかく、50人規模のしかもこんな奈良の田舎にわざわざ来るわけがない!」
とは言ったものの、もしかしてという不安はあった。明くる日その不安は的中したのだ。
話は12月5日に戻る。私は港監督のところへ慌てて走っていった。「先ほどは失礼しました。港健二郎監督ですか?」すると監督は立ち上がり「はい、港です。今日は映画ひだるかを上映してくださってありがとうございました。」と深々と頭を下げられた。
「ワインを飲んでいる時に撃たれるイタリアのマフィアの親分」のような港監督に、絶対怒られると思っていた私は意外な展開にもう「びっくりぽん!」(朝ドラ・「あさが来た」の主人公白岡あさの口癖)状態で、監督の謙虚な姿を前に恐縮してしまって暫く言葉が出なかった。
ちなみに「あさが来た」でも、九州の炭鉱が描かれていた。
それから5分ほど話をさせてもらった。10月17日に監督の話を聞いてそのお人柄に親しみを持ったこと、「ひだるか」を3回観たが、その都度新しい発見がある名作であること、子どもの頃からの無類の映画好きで、こうやって映画監督とお話が出来ることをたいへん光栄に思っている、そんなことをしゃべったように思う。緊張していたのでよく覚えていない。
有難いことに監督はずっと笑顔で聴いてくださっていた。
2部が始まり、港監督から会場のみなさんにご挨拶をしていただき、また討論の場でも監督自ら挙手をして参加してくださった。もちろんお話は上手なのだが、お話の中からお人柄が滲んでくるので、すんなりと気持ちよく内容が入ってくる。
やがてつどいが終了、ゲストと実行委員会のメンバーで懇親会があり、もちろん監督も快く参加してくださった。12人の参加だった。その中で監督はまさに自然体で偉そうにせず誰とでも親しく話をしていた。
生来疑い深い私は、「このおじさん、本当にこんないい人なのか? 映画監督なんて本来海千山千のはずなのに。演技をしているのかもしれないぞ?」と思い、監督を試してみたくなった。ちょっとしたいたずら心なのだが。
「監督! 監督の家に遊びに行っていいですか?」と言ってみた。さすがに「あつかましい!」と怒るかもしれない。
一瞬その場が凍り付いたように感じた。参加者は全員まず私の顔を見て、それから監督の顔にその視線が移った。
続きは次回で!
と思ったが、やっぱり続きを書く。
監督はにっこり笑って、「ああいいですよ、放浪楽人さんは面白い人だ、映画の話をゆっくりしましょう!ハハハ !」
ほんまかいな?何という懐の深い人だろうとびっくりして感心して、嬉しくなった。
この続きは次々回で!
この第53話をアップする前港監督に読んでもらった。すぐこんな返事が返ってきた。
面白いですね。笑ってしまいました。今、花岡事件のドキメント映画企画書執筆で追い込まれていましたが、心が和みました。本当にありがとうございます(^o^)
どこまでも心優しい、太っ腹で前向きな港監督であった。
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読者のみなさんからのレビュー(感想) 第51話「映画 ひだるか2」
ひだるかの詳しい内容や人物像のお話をありがとうございました?
皆様の感想も興味深く拝見しました???続きが楽しみですね??
(村田隆子さん バイオリンプロ演奏家)
ひだるかの話は昔九州でそんなことがあったのかと、驚きました。経営者側と労働組合、死亡者まで出すことになっていたんですね??各々に言い分があるでしょうが、長い年月お金と人が動いたんですね。いつの時代でも、このような戦いは繰り返されるんでしょうね。
(コンサドーナさん 60才代女性)
またまた難しい??ただところどころ入っている写真、北の国からの純や松山恵子、イラストなどに感心してます。 (プルメリアさん 70才代女性)
ありがとうございます!皆さんの感想も嬉しいですね。早速、関係各位に送付させて頂きます。
(港健二郎さん 映画監督・脚本家)
映画のことも気になりつつ、それよりも、たくさんの方が放浪楽人さんの文章のファンなんだなあと、そっちの印象のほうが強く心に残りました〜(笑)
先週末は暇だったので、たくさん映画を見て、本を読みました。リフレッシュ!
(安永早絵子さん 第46話で紹介 打楽器プロ演奏家)
いつも、深い細かいコメントに感心します。港監督の思いもよく把握してますね。次の映画が楽しみです。また第三弾「ひだるか」書くのですね。次回ブログを楽しみに待ってます。
(頑固一徹 がんこいってつ さん 70才代)
頑固一徹さんは私が20代の頃からいろいろお世話になっている先輩です。その人脈の広さには圧倒されます。まさに信念の人、ぶれない生き方の人です。
あの人って誰だろうと想像すると、二人浮かんできた。しかしどちらも大物過ぎて遠い存在、とても無理。だからその正体を知るのが楽しみです。
北の国からの純、家売るオンナの三軒家万智、おけいちゃんだから松山恵子、懐かしの歌手から最近のドラマまで、例えが素晴らしく豊富。
部長刑事の入川保則、若大将の澄ちゃんこと星由里子、びんびん物語の校長佐藤允、みんな知っています、懐かしいです。みんな亡くなりましたが。
(中年ジェットさん 50才代男性)
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読者のみなさんご感想ありがとうございました。次回54話は久しぶりにレビュー特集をします。テーマは「逃げ恥スぺ」と「パルナス」です。まだ間に合いますので、どうぞ感想を送ってください、お待ちしています。