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人生は旅。 
知らない街を歩いてみたい 
知らない海をながめていたい 
どこか遠くへ行きたい 
遠い街遠い海
夢はるか一人旅。

けれど、
遠くへ行かなくても旅はできます。

たとえば、
近所を散歩して知人に出会い
雑談するのも旅。
誰かに読んでもらいたくて、
こうやって文を綴るのも
私にとっては旅。

さて、どこまで放浪できるか ……






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 008  2019年6月25日

 がんばれ現代の社会風刺芸人
             〜消えたウーマンラッシュアワー〜


 ウーマンラッシュアワー(村本大輔・中川パラダイス)というお笑い芸人がいる。2017年12月「THA MANZAI」での彼らのネタは社会風刺を通り越し、時事問題を正面から取り上げる、まさに「朝まで生テレビ漫才編」であった。

 村本「僕は福井県のおおい町出身です。知っていますか?大飯原発のあるおおい町です。その西隣は高浜町、高浜原発。さらにおおい町の東隣は美浜町、美浜原発。その隣は敦賀市のもんじゅ。小さい地域に原発が4基もあるんです!しかし、おおい町には夜の7時以降営業している店はないのです。夜の7時になったら町は真っ暗になるんです。これだけは言わせてください!電気はどこへ行く?! 」(笑い)

             

 2011年3月11日東日本を襲った地震が原因で、福島第一原子力発電所で事故が発生した際、こんな問題提起があった。福島で原子力によりつくった電気が供給され、その電気のおかげで豊かな生活を楽しんでいるのは関東の都会人。それに対し、事故が起こったら放射能の影響で生活の基盤を失い、苦しむのは地元の福島県民。

 2004年公開の「東京原発」(監督・脚本 山川元 主演 役所広司)という映画があった。
あらすじはこうだ。
 200X年。大胆な発想と派手なパフォーマンスでリーダーシップを発揮し、都民の支持を得てきた天馬東京都知事(役所広司)が、臨時緊急会議の席上で爆弾発言。財政の再建のために、東京に原子力発電所を誘致すると。しかも、庁舎のすぐ隣の中央公園に。
驚いたのは、その場に召集されていた副知事、政策報道室長、都市計画局長、財務局長、環境局長、産業労働局長の6名だ。彼らは、物理学の権威で東大の教授を交えて議論をたたかわせるが、この無謀ともいえる知事の提案の裏側に、無関心な都民に国のエネルギー開発について考えさせたいという真の狙いがあることに気づき、ほっと一安心する。
 ところがその矢先、フランスから極秘裏に運ばれてきたプルトニウム燃料を載せたトレーラーが、爆弾マニアの少年・透にジャックされてしまった。しかも、そのトレーラーは都庁庁舎に向かっているという。パニックに陥る都庁の人々。だが、天満知事らの活躍によって爆弾は回避され、その後の緊急記者会見で、知事は原発誘致を宣言するのだった...

 前田有一(映画批評家)は「原子力発電所の抱える問題を痛烈に批判した社会派エンタテイメント。社会問題に真っ向から挑み、それを見事な娯楽作品に仕上げたこのような作品は、最近の邦画では見たことがなく、高く評価したい。原発問題をある程度知っている人が見れば「よくぞ言ってくれた!」と快哉を叫ぶだろう。もちろん、興味ない人にもぜひ見てほしいと思わせる力作だ。とくに大都市にすむ人がこれを見たら、案外ショックを受けるかもしれない。見ておいて損のない一本といえる。 全編、極端なまでに原発反対の主張を貫き、推進派を徹底的におちょくり、こきおろす。『東京原発』を見ると、どうせ社会問題をやるなら中途半端に中立の立場ではなく、これくらいはやってくれないと面白くないなぁと感じる。」と批評した。

 私はこの映画を7年前、小さな集会で観た。なかなか風刺の効いた作品である。東大教授を交えての討論は現実味を帯び、しかもどこかユーモラスに進行する。ラストも意外な展開で、考えオチになっている。2016年公開の映画「シン・ゴジラ」にはこの「東京原発」の要素が取り入れられているように思える。

 良い映画だと思うのだが、今までテレビ放映されたことが無い。なぜだろう?

 ウーマンの漫才はこう続く。村本「福井はとても素敵な所です。福井に住みたいですか?」中川「住みたいよ!」村本「住みたいのなら、福井県に愛があったら大丈夫!」中川「愛があったらいいのね!」(村本の方を向いて)「福井県の方ですか?」村本「ああそうだ!」中川「福井に住まわせてください。」村本「福井県に愛がないと駄目だ!」中川「愛はありますから、お願いします!」村本「では、福井県があるのはどこ?」中川「北陸!」村本「北陸を走る新幹線の名前は?」中川「北陸新幹線かがやき!」村本「その新幹線が停まる金沢や富山はどうなった?」中川「観光客が増えて輝いた!」村本「その新幹線が停まらない福井県はどうなった?」中川「観光客が増えないから、輝かない!」村本「北陸新幹線かがやきが福井に停まるのはいつ?」中川「30年後!」村本「30年後福井のお年寄りはどうなっている?」中川「みんないなくなっている!」村本「いなくなってどうなっている?」中川「夜空の星になっている!」村本「星になって最後はどうなる?」中川「自分自身が輝いている?」村本「ようこそ、福井県へ?」(爆笑と拍手)

 中川(村本の方を向いて)「東京の方ですか?」村本「ああそうだ!」中川「東京に住まわせてください!」村本「そんなに簡単には住まわせない!」中川「お願いします!」村本「では東京都知事の名前は?」中川「小池百合子。」村本「小池都政が大事にしていることは?」中川「都民ファースト。」村本「都民ファーストなのにどうした?」中川「希望の党をつくった。」村本「なぜ?」中川「国民ファーストを目指したから。」村本「でも希望の党が負けるとわかったら?」中川「代表を降りた。」村本「だから結局あの人はただの?」中川「自分ファースト?」村本「ようこそ東京都へ?」(歓声と拍手)

 中川(村本の方を向いて)「沖縄に住まわせてください!」村本「では、現在沖縄が抱えている問題は?」中川「米軍基地の辺野古移設問題。高江のヘリパッド問題。」村本「それらは沖縄だけの問題か?」中川「いや、日本全体の問題!」村本「東京で行われるオリンピックは?」中川「日本全体が盛り上がる!」村本「沖縄の基地問題は?」中川「沖縄だけに押し付ける!」村本「楽しいことは?」中川「日本全体のことにして。」村本「面倒くさいことは?」中川「見て見ぬふりをする。」村本「在日米軍に払っている金額は?」中川「9465億円!」村本「そういった予算を何という?」中川「思いやり予算!」村本「アメリカに思いやりを持つ前に?」中川「沖縄に思いやりを持て?」村本「ようこそ沖縄へ?」(大きな拍手)

 中川(村本の方を向いて)「熊本に住まわせてください!」村本「では、熊本の地震があってから何年経った?」中川「1年半が経った。」村本「現在熊本の仮設住宅に住んでいる人の数は?」中川「4万7千人。」村本「東北の仮設住宅に住んでいる人の数は?」中川「8万2千人。」村本「2020年、東京で何がある?」中川「東京オリンピック。」村本「何が出来る?」中川「新国立競技場。」村本「いくらかかる?」中川「千5百億円。」村本「国民は東京でオリンピックを観たいのではなくて。」中川「自分の家で安心してテレビでオリンピックが観たいだけ!」村本「だから豪華な競技場を建てる前に!」中川「被災地に家を建てろ?」村本「ようこそ熊本へ?」(歓声と拍手)

 中川(村本の方を向いて)「アメリカに住まわせてください!」村本「では、現在アメリカと一番仲がいい国は?」中川「日本!」村本「その仲がいい国は何をしてくれる?」中川「たくさんミサイルや戦闘機や軍艦を買ってくれる!」村本「それはもう仲がいい国ではなくて?」中川「都合のいい国?」村本「ようこそアメリカへ?」(ため息と拍手)

 中川(村本の方を向いて)「日本に住まわせてください!」村本「やっぱり日本が一番か?」
中川「やっぱり日本が一番なんです!」村本「では現在日本が抱えている問題は?」中川「被災地の復興問題、原発問題、沖縄の基地問題、北朝鮮のミサイル問題。」村本「でも結局ニュースやワイドショーで大きく取り上げられるのは?」中川「政治家の暴言・不倫、芸能人の不倫。」村本「それらは本当に大事なニュースか?」中川「いや表面的な問題!」村本「でも何故それらが大きく取り上げられる?」中川「視聴率がとれるから!それらを見たい人がたくさんいるから!」村本「だから本当に危機を感じないといけない問題は?」中川「被災地・原発・基地・北朝鮮問題よりも!」村本「それらの問題よりも?」中川「国民の意識の低さ〜?」村本「ようこそ日本へ?」(苦笑いと拍手)中川「どうもありがとうございました?」村本(観客席を指差し)「お前たちのことだ?」(観客の微妙な笑い 2人舞台を去る)
            

 社会にある理不尽な事柄・問題に、政治を絡めてコンパクトにまとめて笑いにする、人生幸朗・生恵幸子死去以降、最近はあまり見かけなくなった見事な風刺漫才であった。

 こののち約1年間、ウーマンラッシュアワーをテレビで観る機会は無かった。彼らはテレビに出られなかった。