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人生は旅。 
知らない街を歩いてみたい 
知らない海をながめていたい 
どこか遠くへ行きたい 
遠い街遠い海
夢はるか一人旅。

けれど、
遠くへ行かなくても旅はできます。

たとえば、
近所を散歩して知人に出会い
雑談するのも旅。
誰かに読んでもらいたくて、
こうやって文を綴るのも
私にとっては旅。

さて、どこまで放浪できるか ……






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  009  2019年7月20日

 がんばれ現代の社会風刺芸人A
            〜ウーマンラッシュアワーの逆襲〜


 2017年12月の「THA MANZAI」では爆笑問題(太田光・田中裕二)もいつもの彼らの漫才通り、社会風刺ネタをやっていた。籠池夫妻のことや貴ノ岩と日馬富士の暴力事件等を扱っていた。そういえばナイツ(塙宣之・土屋伸之)も社会風刺ネタをする時がある。また、日曜日夕方「笑点」の大喜利で三遊亭円楽も、時の内閣や県知事の政策、話題になった議員などの言動をチクリとスマートに批判する。これは師匠である先代の円楽譲りで、なかなかのインテリジェンスを感じる。
 このように関東には社会風刺や時事問題をネタにする芸人は少数ながらも存在するのに、人生幸朗を生んだ関西の芸人はどうしたことか、と思っていたところにウーマンラッシュアワー(村本大輔・中川パラダイス)の出現であった。
 円楽の風刺ネタは、言い方や内容が上品なのであまりきつく聞こえない。関東人からは共感されることが多い。爆笑問題の太田やナイツの塙のネタは、そのどぎつさに対し相方の田中、土屋が一般大衆の視線でツッコミを入れてくるので、その毒が薄まる。それに比べ、ウーマンラッシュアワーのネタは二人でまくし立てるので、その毒性はかなり強い。

  

 「THA MANZAI」でのウーマンのネタは、とりわけネットでは賛否両論で、瞬く間に大きな話題となった。「よくぞあの大舞台で言い切った!勇気と覚悟を感じた。」と絶賛され、逆に「芸人風情が何を偉そうに。生意気だ、もっと勉強しろ!」と批判された。

 この「芸人風情が」という言い方で私は、「たかが選手が!」と言い放った読売グループのドン、渡辺恒雄(通称ナベツネ)が思い浮かんだ。渡辺(当時巨人オーナー)が堤義明(当時西武オーナー)と手を組み1リーグ制を目論んだのが、2004年プロ野球再編問題だったのである。
 同年6月13日の日本経済新聞による「オリックスと近鉄が合併」というスクープを発端に、翌日には1リーグ制への移行が報じられるなど、選手やファンを蚊帳の外にした再編の流れが球界を巻き込んだ。新聞紙上には連日、合併関連のニュースが流れ、6月末には堀江貴文(当時社長)が率いるライブドアが近鉄買収に名乗りを上げた。しかし各球団の理事による実行委員会では何も決定できず、その一方で選手への説明もないままにオーナーレベルで再編は着々と進んでいた。
 当時選手会の会長(労働組合プロ野球選手会委員長)だったヤクルトスワローズの古田敦也は、選手会側の要求実現(2リーグ制存続等)のために「出来ればオーナー陣とも話し合いの機会を持ちたい」と報道陣に意向を語ったという。それを伝え聞いた渡辺は激怒した。「無礼な!分をわきまえなきゃいかんよ。たかが選手が!」この発言は世の中の空気を一変させたといってよい。
 その後球団経営側と選手会の団体交渉が何回も行われたが合意に至らず、ついに選手会は9月18日19日の両日ストライキを決行する。このとき世論の多くが選手会側についたこともあって、2リーグ制は存続することになった。渡辺はあの一言でとんだ敵役となったのである。

 さて、ウーマンラッシュアワーがなぜテレビの世界から消えたのか真相はわからない。どこからか圧力がかかったのか、それとも彼らの所属する吉本興業やテレビ局が忖度したのか。
 そういえばこんなことがあった。今年の4月、安倍総理が大阪のNGKで吉本新喜劇の舞台に出演したという。これは統一地方選の時期だから、選挙運動にあたるのではないのか。そして6月、西川きよし率いる吉本芸人数名が、東京の首相官邸を表敬訪問したという。きよしは「総理!同日選挙があるのかないのかはっきりしてもらわんと!」と言ったそうだが、ここは庶民派の元参議院議員らしく「消費税と年金問題はどうなりまんねん!」と迫ってほしかった。

 

  私はテレビをはじめとする最近の日本の芸能界を悪くしたのは、吉本とジャニーズとAKBグループだと思っている。芸能界で権力を持つと、政治権力とも繋がりたいものなのか。吉本のようなお笑いは、常に大衆と共にあってほしいのだが。

 民主主義とは、健全な批判勢力があるということ。今から30年前なら、「私は日本社会党の応援団です!」と公言する東京の有名落語家がいたし、日本共産党を支持する有名作家や映画監督もいた。選挙の応援演説で公明党を支援する売れっ子歌手や人気女優もいた。彼らが政治的運動をしたから、仕事を干されたとか映画やテレビ・ラジオに出られなくなったという話はこれまであまり聞いたことがなかった。

 あれから1年後の2018年12月、毎年の恒例「THE MANZAI」が放映された。注目のウーマンラッシュアワーは番組の後半に出演した。
 村本「最近芸人が政治・社会問題について発言することが多くなった。そのことをどう思う?」中川「芸人は政治・社会問題なんかに触れなくていい、ほっといたらいいんですよ!」村本「でも僕は社会で起きている問題を無視したくないって思うんですよ!今世界中で様々な問題が起こり、たくさんの人たちが涙を流しています。僕はお笑い芸人という立場で、誰も邪魔することが出来ない漫才でそういったことに触れていきたい!」中川「おい!ちょっと待ってよ!」村本「しかし中川は、芸人は社会問題なんてほっとけばよい、関係ないと言いました。まさに目先の笑い、目先の好感度、目先の金儲けのためならば、平気で立場の弱い人たちを無視できる最低の芸人、紹介します相方の中川君です!」中川「どんな紹介やねん!」

 その後二人は、村本と中川のコンビの仕事量や幸福感の格差で笑いをとった。後半はほとんど村本の一人舞台。同性愛者に対する偏見の愚かさ・沖縄の海は日本のものでもアメリカのものでもなく沖縄県民のもの・シリア情勢をしっかり見ていこう・原爆の被爆者の声に耳をかたむけよう・日本は本当は平和ではなく国民は平和なところだけしか見ていない・地震の被災地はまだまだたいへん・朝鮮学校の生徒は教科書無償化を求めて寒い中でも必死でビラ配りをしている・電気は使っても原発の危険性については考えない、原発の危険性については考えても、原発が無くなった後の地域の経済については考えない・水道の民営化の危険性については多くの国民は無関心、等について喋りまくった。

 最後に、村本「何が正解なのか真実なのかはよくわからない、人それぞれの価値観だが、世の中に一つだけ真実があるとすれば。」中川「それは何?」村本「この漫才は僕一人でも出来るということ!」(大爆笑)中川「いやーちょっと待って!客にうけても、全然嬉しくない!」村本「漫才師やから最後は笑いにしましたけど、(客に凄みながら)笑って誤魔化すなよ?」

 この漫才をやるにあたっていろいろな圧力・制約があったと思われるが、よく勉強しよく考えてネタを作ったと思う。まさに言いたいことは言った!その不屈の闘志に敬意を表したい。でもその後やっぱり二人をテレビで観ることは無いが。

     

 ここで、私に届いた70才代女性のメールを紹介する。
 「第8話とても考えさせられました。放浪楽人さんよく調べておられますね。感心しました。そういえばあのお二人最近テレビで観ませんね?当時村本さん、はっきり主張される方だなあと印象がありました。本当に意義ある素晴らしい風刺漫才をされていたのですね。弱い立場の我々からすると大拍手!!もっともっと頑張って!!と思いますが、やはり上からの圧力があったのでしょうか?内容からして凄く頭の良いコンビなのに惜しいですね。今、政治家も情けないと思うし、社会に影響力のある人の発言主張もダメなら、本当に私達国民がしっかり関心を持って勉強しなければいけませんね。ありがとうございました。」
 読んでくださる人の存在は有難く、励みになる。感謝!

 もし人生幸朗が健在なら、今の政治情勢をどう捉えるのだろう。「総理の妻の昭恵さん!あなたのことは国民があきえ(呆れ)かえってるぞ!安部君のやろうとしていることはあべない(危ない)、ほんまに心臓(晋三)に悪いわ?」そんなぼやきが天国から聞こえてきそうだ!