有朋自遠方来 放浪楽人(さすらひのがくと)
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人生は旅。
知らない街を歩いてみたい
知らない海をながめていたい
どこか遠くへ行きたい
遠い街遠い海
夢はるか一人旅。
けれど、
遠くへ行かなくても旅はできます。
たとえば、
近所を散歩して知人に出会い
雑談するのも旅。
誰かに読んでもらいたくて、
こうやって文を綴るのも
私にとっては旅。
さて、どこまで放浪できるか ……
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047 2020年12月29日
炭鉱で働く人たちの悲哀を描いた映画3本
今年は三池闘争(三井三池争議)から60年の節目を迎えるそうだ。三池といえば炭鉱。炭鉱といえば炭坑節。
「炭坑節」(たんこうぶし)という盆踊りの定番曲をご存知だろうか?福岡県に伝わる民謡である。現在の田川市が発祥といわれる。もともとは炭鉱労働者(主な仕事は石炭を掘ること)によって唄われた民謡『伊田場打選炭唄』が原曲で、「月が出た出た月が出た、ヨイヨイ」のフレーズで知られる。
では 三橋美智也の歌で聞いていただきたい。
「炭坑」とひとくくりに言っても、仕事の分野は様々だ。運搬係の人、ダイナマイトを仕掛ける人、運ばれた石炭からゴミくずを取り除く人といったように、細かく分かれている。
そういった、分野の違いによって炭坑節は歌詞も節回しも変わっていくそうだ。だから三橋美智也が歌った「炭坑節」以外にも違うパターン、バージョンがあり、そこが炭坑節の興味深いところだ。
ゴットン節 運搬係
石刀唄 ノミで岩盤に穴を開けてダイナマイトを仕掛ける係
南蛮唄 炭坑内の水を、くみだす係
選炭唄 石炭からクズを取り除く女性作業員
このようにそれぞれ違う役目があり仕事の区分けをしていたので、それに応じて歌詞を変えていたようだ。それは一種の労働歌でもあり、また、働く者の気持ちを一つにまとめて仕事を行っていくという重要な役割を「炭坑節」は持っていたのだろう。
さて、炭鉱集落や炭鉱労働者を描いた映画として私の記憶に強く残っている映画を3本紹介する。
青春の門(1975)
筑豊に生まれ育った一人の少年の成長過程を追いながら、明治以来百年間、日本の近代化を支えるエネルギー源となって来た筑豊炭鉱の人間像の中に、日本人の心の原点と、朝鮮戦争を転機とした戦後の歴史の意味を探る。原作は五木寛之の『青春の門〈第一部・筑豊篇〉』。脚本は早坂暁、監督は脚本も執筆している浦山桐郎。
主人公伊吹信介の幼馴染牧織江を演じたのは、これが映画デビューの17才大竹しのぶ。青春の門はこれ以降7度も映画化テレビドラマ化されているが、大竹しのぶは織江のイメージにぴったりで、私にとっては「織江といえば大竹しのぶ」だ。
山崎ハコの歌う「織江の歌」は映画を観た人なら泣かずには聴けない名曲だ。
伊吹信介の義理の母タエを演じたのは吉永小百合。女優として大人への脱皮とばかり熱演したが、吉永小百合は年齢を重ねてもやっぱり清純派だ、どうしても無理があった。大人の色気が不十分。これに対してテレビドラマでタエを演じた小川真由美は上品なお色気がある。まさにはまり役だった。
なお原作では、主人公伊吹信介の成長過程における人間の性について、在日朝鮮人の炭鉱での労働実態、日本人の差別意識などが詳細に描かれている。映画以上に原作をお勧めする。
幸福の黄色いハンカチ(1977)
「男はつらいよ」の山田洋次監督が高倉健を主演に描く人間ドラマ。共演に倍賞千恵子、武田鉄矢、桃井かおり。
失恋して自暴自棄になった欽也(武田)は、新車を買って北海道へ傷心の旅に出る。そこで欽也は一人旅をしていた朱美(桃井)のナンパに成功し、さらに2人は海岸で勇作(高倉)という男と知り合う。旅をともにすることになった3人だが、刑務所から出所したばかりだと話す勇作が、愛妻(倍賞)へ出した葉書のことを語り始め……。
武田鉄矢の映画デビュー作としても有名だが、私は桃井かおりが「不思議ちゃん」から「本格派女優」へと脱皮した作品と捉えている。
物語の舞台となった北海道の夕張もかつては炭鉱の町だった。高倉健は九州から北海道に渡って来た炭鉱夫を演じている。高倉健の父親は実際に九州で炭鉱夫をしていたそうだ。炭鉱労働者の息づかいや生き様を肌で感じていたのかも知れない。任侠の世界で義理と人情の板挟みの健さんから、暗い過去を持つ無口で不器用な男高倉健へと脱皮した作品といえる。
フラガール(2006)
1960年代後半に福島県いわき市の町興しとして作られた“常磐ハワイアンセンター”の誕生秘話を映画化。石炭から石油へとパワーシフトがされる中、いわき市の炭坑も次々と閉山。そこで市民たちは、町興しとして“常磐ハワイアンセンター”の建設を計画。施設の目玉として、フラダンスショーを取り入れることになり、東京からはダンス教師(松雪)を呼び寄せ、地元からは踊り子(蒼井)を集めてレッスンを始めようとするが……。監督は「69 sixty nine」の李相日。
松雪泰子と蒼井優、二人の女優の火花散る演技や最後のフラダンスシーンが爽快で印象に強いが、閉山間際の炭鉱労働者やその家族の悲哀も丁寧に描かれていて、クライマックスも含め結構泣かされるシーンが多いのだ。
炭鉱労働者である母親(富司純子)とフラガールの妹(蒼井優)の間に入って右往左往する兄役の豊川悦司のコミカルな演技も光った。炭鉱夫役なのでいつも全身真っ黒なのだが、つるはしを抱えて悪い奴と対面するシーンはとてもカッコよかった。
また「時代は変わっても、炭鉱で働く者の心意気は変わらない」と啖呵を切る母親役の富司純子は、往年の「緋牡丹のお竜」
を彷彿させてくれて、何か懐かしく嬉しかった。
そして今年、炭鉱を描いた決定版という映画に遭遇する。
炭鉱で働く人たちの悲哀を描いた映画3本
〜 悲しくも美しい人間ドラマ 〜
今年は三池闘争(三井三池争議)から60年の節目を迎えるそうだ。三池といえば炭鉱。炭鉱といえば炭坑節。
「炭坑節」(たんこうぶし)という盆踊りの定番曲をご存知だろうか?福岡県に伝わる民謡である。現在の田川市が発祥といわれる。もともとは炭鉱労働者(主な仕事は石炭を掘ること)によって唄われた民謡『伊田場打選炭唄』が原曲で、「月が出た出た月が出た、ヨイヨイ」のフレーズで知られる。
では 三橋美智也の歌で聞いていただきたい。
「炭坑」とひとくくりに言っても、仕事の分野は様々だ。運搬係の人、ダイナマイトを仕掛ける人、運ばれた石炭からゴミくずを取り除く人といったように、細かく分かれている。
そういった、分野の違いによって炭坑節は歌詞も節回しも変わっていくそうだ。だから三橋美智也が歌った「炭坑節」以外にも違うパターン、バージョンがあり、そこが炭坑節の興味深いところだ。
ゴットン節 運搬係
石刀唄 ノミで岩盤に穴を開けてダイナマイトを仕掛ける係
南蛮唄 炭坑内の水を、くみだす係
選炭唄 石炭からクズを取り除く女性作業員
このようにそれぞれ違う役目があり仕事の区分けをしていたので、それに応じて歌詞を変えていたようだ。それは一種の労働歌でもあり、また、働く者の気持ちを一つにまとめて仕事を行っていくという重要な役割を「炭坑節」は持っていたのだろう。
さて、炭鉱集落や炭鉱労働者を描いた映画として私の記憶に強く残っている映画を3本紹介する。
青春の門(1975)
筑豊に生まれ育った一人の少年の成長過程を追いながら、明治以来百年間、日本の近代化を支えるエネルギー源となって来た筑豊炭鉱の人間像の中に、日本人の心の原点と、朝鮮戦争を転機とした戦後の歴史の意味を探る。原作は五木寛之の『青春の門〈第一部・筑豊篇〉』。脚本は早坂暁、監督は脚本も執筆している浦山桐郎。
主人公伊吹信介の幼馴染牧織江を演じたのは、これが映画デビューの17才大竹しのぶ。青春の門はこれ以降7度も映画化テレビドラマ化されているが、大竹しのぶは織江のイメージにぴったりで、私にとっては「織江といえば大竹しのぶ」だ。
山崎ハコの歌う「織江の歌」は映画を観た人なら泣かずには聴けない名曲だ。
伊吹信介の義理の母タエを演じたのは吉永小百合。女優として大人への脱皮とばかり熱演したが、吉永小百合は年齢を重ねてもやっぱり清純派だ、どうしても無理があった。大人の色気が不十分。これに対してテレビドラマでタエを演じた小川真由美は上品なお色気がある。まさにはまり役だった。
なお原作では、主人公伊吹信介の成長過程における人間の性について、在日朝鮮人の炭鉱での労働実態、日本人の差別意識などが詳細に描かれている。映画以上に原作をお勧めする。
幸福の黄色いハンカチ(1977)
「男はつらいよ」の山田洋次監督が高倉健を主演に描く人間ドラマ。共演に倍賞千恵子、武田鉄矢、桃井かおり。
失恋して自暴自棄になった欽也(武田)は、新車を買って北海道へ傷心の旅に出る。そこで欽也は一人旅をしていた朱美(桃井)のナンパに成功し、さらに2人は海岸で勇作(高倉)という男と知り合う。旅をともにすることになった3人だが、刑務所から出所したばかりだと話す勇作が、愛妻(倍賞)へ出した葉書のことを語り始め……。
武田鉄矢の映画デビュー作としても有名だが、私は桃井かおりが「不思議ちゃん」から「本格派女優」へと脱皮した作品と捉えている。
物語の舞台となった北海道の夕張もかつては炭鉱の町だった。高倉健は九州から北海道に渡って来た炭鉱夫を演じている。高倉健の父親は実際に九州で炭鉱夫をしていたそうだ。炭鉱労働者の息づかいや生き様を肌で感じていたのかも知れない。任侠の世界で義理と人情の板挟みの健さんから、暗い過去を持つ無口で不器用な男高倉健へと脱皮した作品といえる。
フラガール(2006)
1960年代後半に福島県いわき市の町興しとして作られた“常磐ハワイアンセンター”の誕生秘話を映画化。石炭から石油へとパワーシフトがされる中、いわき市の炭坑も次々と閉山。そこで市民たちは、町興しとして“常磐ハワイアンセンター”の建設を計画。施設の目玉として、フラダンスショーを取り入れることになり、東京からはダンス教師(松雪)を呼び寄せ、地元からは踊り子(蒼井)を集めてレッスンを始めようとするが……。監督は「69 sixty nine」の李相日。
松雪泰子と蒼井優、二人の女優の火花散る演技や最後のフラダンスシーンが爽快で印象に強いが、閉山間際の炭鉱労働者やその家族の悲哀も丁寧に描かれていて、クライマックスも含め結構泣かされるシーンが多いのだ。
炭鉱労働者である母親(富司純子)とフラガールの妹(蒼井優)の間に入って右往左往する兄役の豊川悦司のコミカルな演技も光った。炭鉱夫役なのでいつも全身真っ黒なのだが、つるはしを抱えて悪い奴と対面するシーンはとてもカッコよかった。
また「時代は変わっても、炭鉱で働く者の心意気は変わらない」と啖呵を切る母親役の富司純子は、往年の「緋牡丹のお竜」
を彷彿させてくれて、何か懐かしく嬉しかった。
そして今年、炭鉱を描いた決定版という映画に遭遇する。