ゴジラは怖い。神の火を盗んだ我々を罰しに来るのだから怖い。
                                        彼は繰り返し首都に向かい、権力の中枢を破壊しようとする。
                                        これが意味するところを噛みしめるべきである。









































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平成27年 10月 3日 
    『 安全保障関連法 』に対して民主党は何もしなかった


迎合しただけの民主党


『安全保障関連法案』成立の翌日、『安全保障関連法に反対する学者の会』が『抗議声明』を出している。その冒頭部分はこうだ。    

 2015年9月19日未明、与党自由民主党と公明党およびそれに迎合する野党3党は、前々日の参議院特別委員会の抜き打ち強行採決を受け、戦争法案以外の何ものでもない安全保障関連法案を参議院本会議で可決し成立させた。私たちは満身の怒りと憤りを込めて、この採決に断固として抗議する。
                 引用元; http://anti-security-related-bill.jp/

 ずっと長い間、学者・文化人がこう言った声明を出す場合は、必ずこう書かれてきた。 
「政府・自民党は、 …… 」と。
 しかるに今回は、 
「与党自由民主党と公明党およびそれに迎合する野党3党は、 …… 」と、なっている。野党が完全に与党の補完物となっていることが当然の前提として、この声明は書かれている。寂しい限りである。

 野党、特に民主党は、口先では法案反対・成立阻止を繰り返していたが、この法案の本質的な悪を見抜き、現実的に廃案に追い込むような行動は一切しなかった。審議の引き延ばしや議長席周辺の占拠など、今まで野党の議員がさんざん行ってきたルーティンを、もう一度貧しく繰り返しただけだ。安倍一派は、おそらく、余裕の心を持って採決までをスケジュール化していたに相違ない。

 法案は、審議に入ればいずれ採決されるに決まっている。法案が上程されるまでに、やるべきことがあっただろう。安倍は秘密裏にことを進めたのではないのだ。

安倍アメリカ連邦議会演説の犯罪性


 採決の約5ヶ月前の4月末、安倍はアメリカ連邦議会の上下両院合同会議で演説し、安全保障関連法案を夏までに成立させる、と言い放ち、喝采を浴びてご満悦であった。これは一体どういうことなのか?
 日本は三権分立を建前としている。内閣総理大臣である安倍は、司法・行政・立法の三権力のうち、たかだか行政府の長である、というに過ぎない。また、日本には大統領が存在しない。企業の役員構成に例えれば、天皇が「経営権を持たない代表者」として国家元首の役割を代行されている。さすれば安倍は、日本株式会社の専務か常務取締役ぐらいのものだ。所有株式だって25%以下だろう。
 そんな会社の役員の一人が、最重要取引先に出向き、オフレコの場でもないところで「貴社のご期待に添えるよう我が社の営業品目を変えます、いやいや会社の定款だって変えます」と言ってきたのと同じ。「即、解任」レベルの背任行為である。
 民主党は、いやしくも野党を標榜するならば、この時点で、羽田だか成田だかは知らないが、安倍が帰国する飛行場に大動員をかけ、人間の壁でもって安倍の再入国を許さない、といった程度の行動をすべきであった。自らの本気度を示し、大衆の怒りを政治的理念にまで昇華させるべく、反対行動における主導権を獲得すべきであった。

連邦議会演説 民主党の反応


 しかるに、この時民主党は何と言ったか? 私には何の記憶も残されていない。もしかすると、私が失念しているだけかもしれないと思い、民主党のホーム・ページを覗いてみた。すると、ありましたね、4月29日付けで『代表談話 安倍総理の米国議会での演説について』というのが残されている。

 本日未明(現地時間4月29日午前)、安倍総理が米議会上下両院合同会議で演説を行った。そもそも、米議会の前に、日本の国会で、日本国民に対して安全保障政策や歴史認識等について説明を行うべきであり、安倍総理は日本国総理大臣としての最低限の責務すら果たしていない。
 …… (中略) ……
  安倍総理は、「新しい日本を見てください」と訴えた。しかし、安倍政権が目指す「新しい日本」とは、国会での議論も国民の理解もないまま、閣議決定で憲法解釈を変更し、集団的自衛権を前提に、自衛隊が地球の裏側まで行って武力行使や米軍の後方支援ができる国である。武力行使や自衛隊の海外活動について厳しく制限してきた戦後70年の我が国の歩みを、議論もなく変更しようとする安倍総理に強い懸念を持つ国民は多い。民主党は、強い危機感と怒りをもって、国会で徹底論戦を挑む。安倍総理には責任ある説明を求めたい。

                 引用元; https://www.dpj.or.jp/article/106663

 何じゃ、こりゃ? 確かに、憤懣やるかたない、といった口調で論旨も乱れていますが、政治論的レベルで安倍に迫っているものは何もない。せいぜい、
1) 米議会の前に日本で説明してほしかった。
2) でも、済んでしまったことだから、国会で話し合いましょう。
の二点でしょうか。でも、
 相手先に漏らすより、先に内部に向かって説明して欲しかった、というような言い方は、学校のホーム・ルームだとか町内会の会合で、議論が行き詰まった場合、事を収めるための理屈としてなら、あり得るかもしれない。しかしここは政治的理念でもって発言せねばならないところでしょう。安倍の政治理念の誤謬そのものに斬り込んでいかねばならないはずだ。

法案採決 民主党の反応


 9月19日の採決後には、どう言っているか? 怖いもの見たさ、で確かめてみましょう。
 『立憲主義を守るため、国民と共に安倍内閣と戦い続ける』という民主党声明は、こう言う。

 本日、安倍政権は参議院本会議において安全保障関連法案を可決、成立させた。憲法違反の法案を、国民の理解も納得も得られないままに、強引に成立させたことは、我が国の立憲主義、平和主義、民主主義を大きく傷つけるものであり、最大限の怒りをもって抗議する。
 国民的議論を欠いたままに一内閣が意図的・便宜的に憲法解釈を変更したことは立憲主義に対する重大な侵害である。あいまいな新3要件に基づく集団的自衛権の行使は、専守防衛や海外派兵の禁止という憲法9条の平和主義の根幹を揺るがす。…… 以下略 ……

                 引用元;https://www.dpj.or.jp/article/107669

 前回と同じレベルです。
 国民の理解も納得も得られないままに、あるいは、国民的議論を欠いたままに、事を進めたのがいけない、と言うのだ。私なんぞは、安倍に何百時間説明されようが、爪の先ほども彼の言い分を理解できる自信は無い。今、この時期に、幾多の課題・難題さておいて『安全保障関連法案』なんぞを持ち出してくる政治性そのものが受け入れられないのだ。新3要件ですと? そんな戯言、この法案をもっともらしく見せるために、安倍が閣議決定して持ち出してきたもので、そんな議論に乗ること自体が、許し難い譲歩なのだ。
 何よりも、目の前にある "安全保障関連法案可決" の手続き・手順を批判する、という域から一歩も踏み出そうとしていない、のが苛立たしい。安倍政権の政治性への根本的批判がどこにも無いではないか?

民主党には 執行部なし? スタッフ不在?


 想像するに、民主党には、例えば執行部などといった集団性のなかで物事を検討したり、優秀なスタッフに意見やプランなりを出させたりする、と言う風土がないのではないか? 代表になったのだから、岡田はん、せいぜい頑張りなはれ、とただ一人放り出されて、一人か二人の秘書が、岡田単独の指示で声明文を書いている。出来たものは検討もせずに外部に出す。こんな光景を想像してしまう。自民党安倍の方はきっと違うぞ。優秀なスタッフを大勢抱え込んでいるはずだ。閣議に出す案件だって事前検討おさおさ怠りなく、演説・スピーチなどは予行演習までしているぞ、きっと。

 悪い方、悪い方に解釈するのはいけない、とは自戒してみても、これでは「民主党とは、旧自民党の内部でとうとう主流派のグループに加われなかった人たちの寄せ集め、プラス・アルファ」だと再確認せざるをえない。今は弾き出されて野党の立場にいるから、とりあえず主流派の提案には反対と言っておこう。ただ、それだけのこと。自分の存在証明としての反対。端から戦う気など無かったのではなかろうか。

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