難波駅を出た電車がわずかに右にカーヴすると、つり革に掴まっていた男たちは一斉に右側の窓から外を見やった。
 ほんの一瞬、大阪球場のスコアボールドが見えるからだ。
 私の家は球場から1キロ以上も離れていたが、物干し場にあがると、観客のあげる歓声が風に乗って流れてきた。
 確かに昭和のある時代まで、私たちは「自分の五感で直接」社会の動きを感じとっていたのだ。                           







せっかくの画面を、
汚したくはないのだけれど、
危険物の画像、貼ってきます。
【閲覧注意!】


とてもあぶない
よいこは
ちかずいたり
さわったり
しないようにしよう


強姦魔・居直り男
山口敬之



憲法違反を犯して平気
内閣官房長官菅義偉 の 秘書官
警視庁 刑事部長 中村格



強姦魔の書いた本
アイム・ソーリー
ヒゲ・ソーリー



アントー なんて
意味不明だわ






"The Usual Suspects"
(1995;Bryan Singer)

私はブライアン・シンガー監督の作品があまり楽しめないのだが、「ユージュアル・サスペクツ」だけは別。抜群に面白い。



自己紹介のページで「びっくり仰天どんでんがえし」の例として、
『ショーシャンクの空』の最後で、ティム・ロビンスの独房の壁に、リタ・ヘイワースのポスターが貼られていた理由が分かる瞬間。
『ユージュアル・サスペクツ』の最後で、ケヴィン・スペイシーの前髪が、横山ノック風であることの理由が分かる瞬間。

の二例をあげているが、その感想は今でも変わらない。
ケヴィン・スペイシーの演じるヴァーバル・キントが、そのままケヴィン・スペイシーの人格であると思わせてしまうほどだ。
この映画は共演者がみんな適役ですね。特にディーン・キートンを演じるガブリエル・バーンが最高です。その前の「ミラーズ・クロッシング」(1990:ジョエル・コーエン)での役柄とぴったりとリンクします。





「アンフェタミン」の広告
あの「タケダ薬品」です



これも「アンフェタミン」の広告

















































































Karl Marx(1818-1883)



John Maynard Keynes
(1883-1946)

Marxの没年に生まれています!


Joseph Alois Schumpeter
(1883-1950)

彼もまた、
Marxの没年に生まれています!!



































































井伊直弼(1815-1860)
(文化12-安政7)

Marxより3歳年上


現在の桜田門



井伊直弼の生涯を描いた『花の生涯』(1963)が、NHK大河ドラマの第1作なんだそうです。

井伊直弼を演じたのは尾上松緑。
私は一回も見たことがなかったけれど。
第2作が『赤穂浪士』。
これも見たことがない。
大石内蔵助を演じた長谷川一夫の「おのおのがた」と云う台詞を、声帯模写の桜井長一郎が真似するのだけ知ってます。
考えてみれば、それ以降も大河ドラマなんて見た記憶がない。理由は分かりません。面白くなさそうだからズッと見なかっただけです。




     ページの上段へ

右も左も、『桜』と『エリカ』
       ーーーー 関西電力 3.2億円収賄汚職 その3
                  (2019年 11月 29日)


  老いて 餓え
  若きは 渇え 石つぶて

 (嗚呼 されど!)
  右も 左も
  桜 と エリカ
                  ――― 香港デモのニュースを聞いて



 

インテリ面(づら)した政権擁護者たち


 女優の沢尻エリカさんが逮捕されたとき、ネット上には、これは「“桜を見る会”から関心をそらすための、政権による陰謀である」という意見・ツィートが続々と出現した。
 それに対して、インテリ面(づら)をひっさげた「大学教授」や「ジャーナリスト」たちが、即、いかにも分かったような口吻で反論する。「稚拙な意見である、日本の政治と司法の機構は、そんなに上手く、政権が容疑者の逮捕をコントロールできる仕組みにはなっていない」という風に。「あの首相経験者までが同調して陰謀論を述べるのは驚きだ」などと、鳩山由紀夫さんを名指しで批判するやつもいた。
 本文に入る前に私の結論を先に述べておくならば、「沢尻エリカさんの逮捕は、“桜を見る会”から関心をそらすための、政権による陰謀」以外の何物でもない。ただし、野党・ジャーナリズムによる“桜を見る会”の追及も、「いま、世界と日本で同時進行している経済破綻と民主主義崩壊の実態から、人々の関心をそらすようにしか働いていない」。話が錯綜していて、上手く展開する自信が持てないが、とにかく書き始めてみる。

 のっけから余談になるが、何時の頃からか、断片的に報道される鳩山さんの「突飛な」言動を論(あげつら)うことが流行するようになった。何かを論証するためではなく、また、自分の論調に箔をつける目的でもなく、ただ「鳩山由紀夫」という個人のイメージを貶めて「民主党政権時代の悪夢の3年間」という奇妙な歴史認識を醸成させようとする、極めて悪質な印象操作である。
 確かに、鳩山さんは政治家としては脇が甘いようにも思えるが、脇を固めているだけで何の政策も捻出できないでいる凡百の政治家もどきと対比してみると、鳩山氏は本質的に政治家である。就任と同時に、彼は何をしようとしていたのか。アメリカに屈服し、アメリカに追従することから、日本の政治と外交を解き放とうとしていた、と私には思える。私だけではない、官僚どももそう思った。だから彼らは慌てふためいて、鳩山潰しにとりかかったのである。
 その彼の最弱点部分だけをピンポイントで強調して、民主党政権時代を全否定した気分に浸っている。これこそ稚拙な尻馬乗りではないか。


エリカ逮捕は政権による陰謀であることの証明


 「エリカ逮捕は陰謀」論に戻ろう。
 思い出せ。2015年6月某日、あの強姦魔山口敬之に逮捕状が出て、高輪署の捜査員が成田空港で彼の帰国を待ち受けていた、しかるに、まさにその現場で逮捕状の執行が停止された、あの一件を。
 すでに周知の事実であるが、当時警視庁の(言い換えれば「東京都警察本部」の、つまり高輪署の上部組織の)刑事部長だった中村格が、「逮捕状の執行停止は私の判断であった」と認めている。この中村格は、2012年12月から2015年2月まで、内閣官房長官菅義偉の秘書官であった。
 「阿倍君のお供だち」である自称ジャーナリスト山口敬之は、被害者に向かっては居直りを続けているが、安倍政権に対しては、『総理』とか『暗闘』とか云う、安倍晋三ウルトラ・ヨイショ本を立て続けに書いて、その借りを返したのである。
 裁判所が発行する逮捕状を無効にできる政権なら、捜査現場に逮捕状の請求を急がせることぐらい、(超)簡単なことではないか。事の軽重を考えてみよう。

A: 「裁判所が発行する逮捕状を無効にする」とは、「独立しているはずの司法権を行政が侵犯する」行為である。明らかに、三権分立を明記する日本国憲法に違反する行為であり、裁判所へ持ち込める訴訟案件である。そのリスクを冒してまで、安倍 ― 管ラインは、警視庁の中村に、逮捕状の無効化を強いたのである。
B: 一方「現場に逮捕状の請求を急がせる」のは、単に、「仄めかす」だけで十分である。おそらく「急いでやってくれたまえ」ぐらいの一言で済んだはずである。

 さて、AとBと比較して、どちらの方が容易なことなのか? 猿でも分かるだろう。
 しかるに、インテリ面(づら)をひっさげた「大学教授」や「ジャーナリスト」たちは、「庶民の直感的覚醒」に対して、いかにも分かったような口吻で、「お前たちは無いも分かっていない」と曰うのである。


「マトリ」と「ソタイ」


 麻薬犯罪の取り締まりは、いわゆる「マトリ」と「ソタイ」がしのぎを削っていて、双方とも、いつでも身柄を拘束できる"Usual Suspects"(ユージュアル・サスペクツ;常習犯的容疑者)のリストを持っている、と云われる。
 「マトリ」とは『厚生労働省・地方厚生局・麻薬取締部』のこと。
 「ソタイ」とは『警視庁・組織犯罪対策部』のこと。
 強姦魔山口敬之の逮捕状停止の例に見るとおり、「警視庁」は「憲法違反を犯してまでも」現政権の言うとおりに動く。「ソタイ」はその「警視庁」の一組織なのである。(この点に留意すべし) そして今回、沢尻エリカさんを逮捕したのは、この「ソタイ」だった。
 この関係を見るならば、「桜騒動とエリカ逮捕は全く無関係」と言い切るには、よほどの予断と偏見が必要となるだろう。

 私なんぞは警察権力の組織構造などにはまったく興味がないから、組織の名称だけで判断するしかない。沢尻エリカさんの容疑は「合成麻薬"MDMA"を所持していた」と云うことらしいが、彼女がそれを服用していようが、吸引していようが(どのように“摂取”するのか、私には分からない)、もっと別の「悪い悪い」薬物を摂取していようが、それは「彼女という一個人の犯罪」である。どうしてそれが『組織犯罪』になるのか、訳が分からない。売ったヤツが『犯罪組織』であるから『組織犯罪対策部』が捜査するのだと云うのなら、その『犯罪組織』をゴッソリと摘発するのがテメエらの仕事だろ、違うか? 孤立無援の女性一人を逮捕して、警視庁・組織犯罪対策部でござい、とは笑止千万、単なる「美少女いたぶりの変態集団」であるとしか思えない。


大日本帝國における 覚醒剤大量使用


 あまり横道にそれると前に進めなくなるが、もう一言だけ余談を。
 沢尻さんが所持していたのは "MDMA" だったという。 "MDMA" なんていうから、新しいデジタル機器の接続インターフェイスか何かだろうと勘違いしそうだが、『3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン』(3,4-methylenedioxymethamphetamine)の略称なんだそうな。 "MDMA" と略称されるのだから、"methylene-dioxy-meth-amphetamine" と区切って読むのだろう。ごく普通に日本の歴史を勉強した人ならば、この最後の "amphetamine" 「アンフェタミン」と云う言葉に、ビビッと反応するはずである。

 そう、第二次大戦の時、長時間の戦闘とか飛行・航行に耐えれるように、兵士たちに大量に投与された覚醒剤が「アンフェタミン」でしたね。銃後の一般人にも、生産性が上がるからと、その服用が推奨されていました。「ゼドリン」「アゴチン」「ソビリアン」という商品名で市販されていた。
 あの日本会議や、この日本会議を思想的よりどころとしている安倍晋三を含む多くの国会議員たちは、太平洋戦争を大東亜戦争と往事の呼称に言い換え、この覚醒剤投与も含めた戦争行動の全体を反省的に総括したことがない。つまり、国家が兵士に「アンフェタミン」を大量投与したことを、いまだに許容しているわけだ。「そのような人たち」に、一人の女性が、まことつつましやかに、 "MDMA" (アンフェタミンの亜種であり、ほぼ同等の作用がある)を摂取したことを非難する資格はないのである。論理的にも、倫理的にも。

 あらあら、余談のつもりが大変な話になってきましたよ。
 でもねぇ、70歳越えの爺ぃである私でさえ、10分ほどの検索でこの事実に行きついたのだ。しかるに、「エリカ逮捕は、政権とは無関係」と言い切るインテリ顔の諸氏は、誰一人として、この事実に気づかなかったようである。君たちも、なんとかして、 "MDMA" の一袋でも調達して、少しは覚醒したまへ。愚鈍なる精神のまま大衆を見下す疑似インテリは、最終的には大反撃を食らうだろう。老婆心ながら、ご忠告申し上げる。


「誰が?」はどうでも良い 「集合的意識」こそ恐ろしい


 前回の最後で私は、このような政治的謀略をいったい誰が仕掛けるのか? という点について、次のように述べた。
 「こうしなければ現政権の危険度が増す、という危機感が、保守勢力のなかに集合的意識となって作用していることは確かなのだ。中心的人物として、ある個人とか、グループが特定できるかもしれない。出来ないかもしれない。でも、それは、どちらでも良い。」
 ここでも同じ事を繰りかえそう。
 「誰が仕掛けたのか?」とか「本当に、誰かが仕掛けた罠なのか?」などと云う問いは、たいして意味がないのだ。Aがやらなければ、かわりにBがする。Bがしなくても、他の誰かがする。自分が仕掛けていることに無自覚な場合だってある。いや、特定の個人がトリガーとならなくとも、自生することだってありうる。保守的・反動的な危機感は「集合的意識となって作用」する。これが怖いのである。日本人ならたいてい「東京裁判」の映像記録を観たことがあるだろう。被告席のA級戦犯たちは、戦争行動の責任を問われると、みな一様に「私が決断したことではない」と主張していた。彼らは嘘を付いているのではない。本当に「自分の判断ではなかった」と信じているのである。

 昨今のマスメディアは、「一般的常識から見て非難されうるとみなされた個人」に対しては、情け容赦のない残虐的攻撃性を示す。どれぐらい「普通ではないか」という断片的証言をあちこちから掻き集め、それを結合・増殖させて、あたかも魔女か異星人であるかのような人物像を捏造し、大衆の加虐嗜好をとことん煽り立て、これでもか、これでもか、と晒し者にする。
 一方、政府や警察や大企業に対しては、公式に示された「会見」「発表」を鸚鵡返しに伝えるだけだ。辻褄の合わない談話であっても、浮き世離れした法螺話しであっても、問い返すことすらしない。
 では、今回の場合はどうだったのか?
 「ソタイ」は、沢尻さんの逮捕より以前に、 NHKを初めとするマスメディアに逮捕の情報をリークしていた! メディアは、逮捕の前日から沢尻さんをつけ回し、その後ろ姿をヴィデオに収め、「公共放送」の電波で放送した! これらがすべて法治国家の日本で行われているのである。
 安倍晋三ら自民党の諸氏は「憲法を改正して、この日本を守り抜く」などと意味不明の譫言(うわごと)を発し続けているが、それは「少しでも日本国憲法を勉強して、例え犯罪の容疑者であったとしても、その個人の人権を守り抜く」良識を持った政治家であって、初めて言える台詞である。安倍晋三ら自民党の諸氏は、日本国憲法の理念などはなから念頭になく、日本と日本人を守らねばならぬなどとは、これっぽっちも気にしてはいない。

 話が右往左往したが、元に戻そう。
 インテリ面(づら)をひっさげた「大学教授」や「ジャーナリスト」たちが何と言おうと、「沢尻エリカさんの逮捕は、“桜を見る会”から関心をそらすための、政権による陰謀」以外の何物でもない。客観的事実としてそうなのである。



(中休み)
『一握の知力』版『ユージュアル・サスペクツ』ポスターを造ってみました。





ここからが本題


 さて、ここからが今回の本題である。
 では、野党やジャーナリズムが、「エリカ逮捕による問題点そらし」に惑わされることなく、「桜を見る会問題」に集中して安倍晋三と現政権の疑惑を追及しえたとして、それで正しい方向を向いたと言えるのだろうか?
 残念ながら、No, である。

 確かに「桜を見る会」の問題は、安倍晋三にとってはやっかいな懸案であると思われる。なぜなら、「桜を見る会」の問題は、「政策」の無効性とか、安倍晋三と閣僚諸氏に向けられた様々な疑惑に比べて、格段に「大衆にとってよく分かる問題」だからである。


「アベノミクス」の場合


 例えば「アベノミクス」の場合はどうか。
 これは分かりにくい。首相官邸のホームページを見ると、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の「3本の矢」でもって「持続的な経済成長(富の拡大)」を目指す、なんてことが書かれてある。けれど、これを読んで、ああ、成る程、と納得できる人はいないだろう。
 理解できないのは当たり前で、ここにあるのは、「凡庸な企画会社」が「顧客会社の凡庸な役員」に向けて行う「御社の成長戦略プレゼン」の亜流でしかないからである。「御社」の持つ貧しい「経営資源」を、無理矢理、それらしく、「パワポ」("MS Office Professional"に付いている"Presentation Soft"を、業界用語的に気取って略称したもの)の画面にまとめただけのものである。
 字面をよく見てみよう。金融政策、財政政策、成長戦略、という言葉は単なる「項目名」である。それに、大胆な、機動的な、民間投資を喚起する、といったお飾りの言葉をつけているだけだ。仮に、ハッカーが首相官邸のサーバーに侵入して、飾り言葉をそっと入れ替えても誰も気づかないだろう。つまり無意味・無内容なのだ。

 「持続的な経済成長(富の拡大)」なんて云う言葉も使われているが、マルクスでも良い、ケインズでも良い、シュンペーターでも良い、経済学の基礎の基礎を少しでも学んだ人ならば、ここで使われている(富の拡大)には何の内実も含まれていないことを見抜くであろう。
 (富の拡大)は、「生産 → 流通 → 消費」という『実質経済』の拡大的循環の結果もたらされるものである。「アベノミクス」にはこの『実質経済』の実体が存在しない。あったのは「原発の海外への売り込み」ぐらいのもので、これはことごとく失敗している。(時節がら、当然だろうに)
 「アベノミクス」にあるのは『金融経済』への手出しだけ。これはつまり、とことんまで減衰させられた『実質経済』が、やっとのことで生み出した(富)を、いかに合法的に巨大金融資本に再配分するか、という内容である。資産の時価評価による見かけの好況感の演出、巨大企業のグローバル化と本社機能の海外移転による税収の減少。だから消費税増税で補填するしか方法がないわけだ。
 この錯綜したプロセスは見通しが悪い。だが、解けない謎ではない。しかるに野党議員も・ジャーナリズムもちっとも勉強をしないから、国会で「アベノミクス」を解析的・論理的に追及することができなかった。
 だから安倍は平気だったのである。


「森友学園問題」の場合


 あるいは、また「森友学園問題」の場合はどうか。
 この問題の本質はレイシズムである。児童に教育勅語を唱和させ、「韓国人と中国人は嫌いです」と文書に書いて配布する教育機関の運営者がいた。安倍晋三の妻はその学園で講演を行い、安倍晋三からの寄付金百万円を手渡す。国会で追及されると、「私と考え方を同じくする人」であると、思想的共感者であることをを表明した。海外メディアはこの点を正確にとらえていて、例えば(英)ガーディアンは「安倍晋三と妻 超ナショナリスト学校に現金を渡したと責められる」という記事を書いている。
 だから、野党議員は国会で「安倍総理、貴方も韓国人と中国人が嫌いなのですね?」と糺せば良かったのだ。簡単なことである、たった一言である。安倍には逃げ場がなかった。議事録に記載されているだろうし、"You Tube"には動画がある。彼がどう答えようが、先進民主主義国の首相がレイシズムを先導していることが、国会の場で炙り出されるのだ。そのことだけで国際世論は沸騰し、放っておいても安倍内閣は崩壊したかもしれない。

 しかるに、誰一人として、この問いを発する議員はいなかった。ありきたりの、官有資産の大幅ディスカウントの問題にすり替えて、誰の指示だったのか、だの、記録はどうなっている、だのと、議論はどんどん「レイシズムという核心」から乖離していった。

 差別を無くする行動の第一歩は、差別の実態を顕在化させることである。しかるに、野党もジャーナリズムも、そう動かなかった。目の前にいる内閣総理大臣の差別を許容した。気づいていながら差別問題を避けることこそ、差別を助長する。(もしかしたら、差別だと認識していなかったのかもしれない …… ) だからこそ、閣僚やら大臣やら国会議員たちが、次々と「不適切発言」を連発しても、「もし私の発言を不快と感じる人がおられるのなら謝罪する」などという詭弁が、責任回避のマニュアル的発言として定着してしまったのである。
 「森友学園問題」は、顕在化された差別事象であった。その本質は誰にでも理解できることであった。しかるに、野党とジャーナリズムの差別助長体質が、その本質を隠蔽した。
 だから安倍は平気だったのである。


「桜を見る会」は、とても分かりやすい


 話を戻そう。
 この二例と比べると、「桜を見る会」は、格段に「大衆にとってよく分かる問題」である。
 来る年も、来る年も、満面の笑みを浮かべた安倍晋三夫妻を中心にして、まったく似合わない背広姿の芸人やら、猿回しのように着飾った運動選手たちが、ザンザカ・ザンザカと写真を撮り、ザンザカ・ザンザカと SNSにアップする。ごく通常の美的感覚をもった人たちは、見たくもないものを次々に見せつけられて、もういい加減うんざりしていたのである。改めて自分の周りを見渡してみて、安倍晋三と写真を撮るからと云って、あれほど喜ぶような人など滅多にいないことに気付き、その人選になにやら胡散臭さを感じていたのである。だから、「桜を見る会」に関する疑惑が指摘されれば、ああ、あの、さんざん、写真で見せつけられた、アレのことか、と、すぐに認知し、あの胡散臭さを思いだして、やっぱりね、と納得する。こんな風に、「桜を見る会」は、大衆にとって、実感の伴った、とてもよく分かる問題なのである。
 難しい解説をしなくとも、即自的に(an sich)大衆は自分たちを支持してくれるだろう。まこと安直に野党もジャーナリズムも、一斉に「桜を見る会問題」に飛びついた。たちまち大衆も「桜を見る会問題」に食いついた。まるで枯れ野に火を放ったような勢いで。

 安倍晋三も、その気配を感じて、今回は少しヤバイ、と感じているようだ。昨日・今日の報道写真にみる安倍晋三の憔悴ぶりは滑稽なほどだ。

 でもね、「桜を見る会問題」って、それほど大事な問題だろうか?
 野党とジャーナリズムが、他のすべての重要項目を投げ打って、一点突破式に全力集中するほどの価値がある問題だろうか?



論点の 壮絶なる ブレまくり


 もう一度、最近の野党・ジャーナリズムの「論点のブレ」を振り返ってみよう。
 前回、引用した、10月2日の新聞記事を、再引用する。

『朝日DIJITAL』(2019年10月2日)
 (国会)召集前に立憲、国民民主党を中心に統一会派が結成され、衆院の勢力は 120人に。第2次安倍政権以降、最大の野党会派となった。今月から始まった消費増税の妥当性や日米貿易協定の成否など論戦のテーマが山積する中で、政府の姿勢をただす問題として照準を合わせるのが、あいちトリエンナーレへの補助金全額不交付▽かんぽ報道をめぐるNHK番組の続編見送り問題▽関西電力の金品受領問題――の追及3点セットだ。

 ここでは、正確に、「山積みする論戦のテーマ」として、次の2点が正しく指摘されている。

A:今月から始まった消費増税の妥当性
B:日米貿易協定の成否


 まさにその通り。これこそ「論戦のテーマ」であった。しかるにこの記事にある通り、野党の統一会派は「論戦のテーマ」を壮大にブレさせた。

1、あいちトリエンナーレへの補助金全額不交付 !
2、かんぽ報道をめぐるNHK番組の続編見送り問題 !!
3、関西電力の金品受領問題 !!!

 これを嬉々として『追及3点セット』などと呼び、浮かれまくっている人たちが「野党統一会派」などと自称している。戦後史上最大級の悲喜劇 !!!!

 この点を指摘したのが、前回の記事『疑惑のワルツ ― 何故、今、関電?』であり、私は、『消費税増税』に加えて、『トリチウム汚染水』『日韓貿易戦争』の問題から眼をそらすな、と主張していたのだ。
 そのとき、『日米貿易協定』について触れなかったのは、小生の不覚である。アメリカと署名を済ませてしまったのだから、政府・自民党は強行採決をしてでも法制化を図るだろう、とは思っていたが、まさか、こんなにあっさりと、衆院を通過させるとは思ってもみなかった。


日米貿易協定案衆院通過 いつの間に?


時事ドットコムニュース(2019年11月19日16時22分)
〔標題〕 日米貿易協定案、衆院通過 来年1月の発効目指す
〔本文〕 10月に署名した日米貿易協定の承認案は19日の衆院本会議で、自民、公明などの賛成多数で可決、参院に送付された。日本は環太平洋連携協定(TPP)の水準の範囲内で農産物市場を開放し、米国は自動車・同部品を除く工業品関税を撤廃・削減する。政府・与党は12月9日までの今国会で承認を取り付け、2020年1月の発効を目指す。
 菅原一秀前経済産業相や河井克行前法相の辞任などで国会が一時空転。衆院通過は政府・与党の当初想定より1週間程度遅れており、審議日程は厳しい。茂木敏充外相は19日午前の記者会見で「参院でも丁寧な説明に努め、一日も早い承認をいただきたい」と語った。
 本会議の討論では、国民民主党の後藤祐一氏が、米国の自動車・同部品の関税撤廃が継続協議となったことを厳しく批判。政府が回避したと説明する米国による日本車への追加関税発動も「本当に回避できたか不明だ」と主張し、協定承認案への反対を表明した。
 一方、自民党の鈴木憲和氏は賛成討論で、コメが関税撤廃・削減の対象外となったことを評価した。
    https://www.jiji.com/jc/article?k=2019111900155&g=pol

 記事には「国民民主党の後藤祐一氏が、米国の自動車・同部品の関税撤廃が継続協議となったことを厳しく批判」とあるが、その点で日本側が不利になるとは思えない。いちいち調べずに「感じ」だけで書くのだが、日本の自動車メーカーは、対米輸出分など、すでに米国への工場移転を進めているはずである。トヨタだったかホンダだったか忘れたが、あらたに米国工場を立ち上げる計画を示して、トランプ氏はアベは話が分かるヤツだ、と喜んでいたのではなかったか。だいいち、トヨタやホンダの不利益に直結するようなことを、日本政府がするわけがないだろう。


  あな恐ろしや 日米貿易協定  


 まず指摘せねばならぬのは、TPP以来議論されてきた日本の農業への打撃である、今回農林水産省は、『日米貿易協定』の発効が日本の農業にどれほどの影響を及ぼすかの「試算データ」を(どうせ、数値を弄くり回しただけの試算だろうが)ほとんど国会に提出しなかった。(最後に、チョロっと出したらしいが) 日本の農業が被る損失の具体的数値が、ほとんど認識されないまま衆院で可決されている。

 さらに深刻なのは、米国が露骨にその意図を示している『ISD条項』『為替条項』『NVC条項』『スナップバック条項』『ラッチェット規定』『未来最恵国待遇』などが、まったく議論されていないことである。

 多くの人が指摘しているように(ただし、大手メディアはスルーしている)、これは、1858年(安政5年)の『日米修好通商条約』の復活を思わせるほどの不平等条約である。
 安政5年の条約に調印した大老井伊直弼は、その2年後、桜田門外で斬殺された。政府要人の暗殺はテロに違いないのだが、この事件は「桜田義挙」と呼ばれ、その実行者たちは、「桜田十八烈士」と賞賛された。それくらい『日米修好通商条約』が「売国的」であったからである。
 令和元年の条約も、屈辱的なこと、不平等であること、安政5年のそれと同じである。これはもう、「左翼が反対する」より以前に、「右翼が国会と首相官邸に突入し、阻止するヤツを叩き切る」ような案件だと感じる。右翼を自認する人たちよ、あの大音響・装甲車風黒塗り車輌は、単なる虚仮脅かしなのか。
 
 今回は詳しく書く余裕を持たないが、一言だけ述べておこう。
 『日米貿易協定』と新聞は書くが、この呼称は曖昧である。アメリカの最終目標は『日米自由貿易協定』(FTA:Free Trade Agreement)であろう。「自由貿易」という言葉に惑わされてはならない。これは日米の企業が自由に、つまり関税や規制の制限なく貿易しあうこと、を意味しない。あくまで「アメリカの、特に国際金融資本が、日本市場で自由に取引できること」がその正体である。アメリカ側の資本が、日本市場における商売に不自由を感じたならば、自由に訴訟が起こせる。あるいは、アメリカ資本が、日本の他の貿易国より不利であると感じたならば、これまた自由に訴訟が起こせる。「自由貿易」の意味する自由とは、このような自由である。訴訟はアメリカの国内で行うことができ、訴訟対象が限定できない場合には日本という国家が訴訟の対象となる。

 つまり、こう言うことだ、仮に(あくまで〔仮に〕ではあるが、ほとんど不可避的な〔仮に〕である)アメリカの保険会社が日本人に健康保険を売りこもうとして、「国民健康保険」の仕組みが、それを妨げていると感じるならば、日本国を相手に訴訟が起こせるのである。訴訟は原告側のアメリカで行われるから、日本は負けるに決まっているのだ。
 いや、そんな暢気なことは言っておれない、まさに今のままでも、日本政府はアベノミクスと称して円安誘導を続けている、これはアメリカの貿易にとって不利益をもたらしていると、トランプ氏が日本政府を相手に訴訟を起こせるのである。
 (中休み)の『一握の知力』版『ユージュアル・サスペクツ』に登場する皆さんは、このことを理解しているのだろうか? 

 深読みすれば、国民健康保険制度の維持に困難を感じている日本政府が、少しずつ、少しずつ、本人負担分を増加させて行くプロセスに嫌気がさして、それなら、いっそのこと、アメリカの保険会社に訴訟を起こさせれば、自らの手を汚さずに、一気に「国民健康保険制度」を崩壊させることができるのではないか、と目論んでいる ……。

 こんな、恐ろしい、売国奴的法令が、本格的な審議のないまま、11月19日、衆院を通過した。
 野党は、「桜を見る会」の追及ばかりで、『日米貿易協定』には形ばかりの抵抗も示さなかった。
 マスコミは「エリカ逮捕」に興じてばかりいて、『日米貿易協定』の本質を熱心に報道しなかった。

 だから、
「エリカ逮捕は政権による陰謀である」という意見は、客観的事実として正しい。

 また、
「桜を見る会騒動も、『日米貿易協定』から国民の眼をそらすためのフェイク・ニュースである」と見るのが正しい。
 いくら安倍晋三が困った顔をしようが …… 、代わりはいくらでもいる。



(最後に)
 ネット上のツィッターでしょうか、『日米FTA』と『米韓FTA』について、その『毒素条項』を簡便にまとめた表がありました。とてもよく出来ているのでコピーさせていただきます。

 


 −−【その3】了−−    関西電力 3.2億円収賄汚職 トップへ