難波駅を出た電車がわずかに右にカーヴすると、つり革に掴まっていた男たちは一斉に右側の窓から外を見やった。
 ほんの一瞬、大阪球場のスコアボールドが見えるからだ。
 私の家は球場から1キロ以上も離れていたが、物干し場にあがると、観客のあげる歓声が風に乗って流れてきた。
 確かに昭和のある時代まで、私たちは「自分の五感で直接」社会の動きを感じとっていたのだ。                           







































































































山路愛山
(やまじ あいざん)
1865年(元治元年)
   〜1917年(大正6年)








三野村利左衛門
(みのむら りざえもん)
1821年(文政4年)
    〜1877年(明治10年)
元祖:三井




岩崎弥太郎
(いわさき やたろう)
1835年(天保5年)
    〜1885年(明治18年)
元祖:三菱




澁澤榮一
(しぶさわ えいいち)
1840年(天保11年)
    〜1931年(昭和6年)
元祖:日本資本主義




五代友厚
(ごだい ともあつ)
1836年(天保6年)
    〜1885年(明治18年)
元祖:商都大阪




安田善次郎
(やすだ ぜんじろう)
1838年(天保9年)
    〜1921年(大正10年)
元祖:安田









































































































































































































































































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世論が間違ってますよ。世論はしょっちゅう間違いますよ。
     もうオリンピックなんか、止めてしまえ。 その17
                  (2021年 6月 20日)



  竹中平蔵が、東京五輪の中止や再延期を求める世論が高まっていることに対し「世論が間違ってますよ。世論はしょっちゅう間違いますよ」と発言した。当然のことながら、批判の集中砲火を浴びている。だが、今に始まった事ではない。竹中はもう二十年近くも前、第二次小泉純一郎内閣で郵政民営化担当大臣になった時、露骨に国民蔑視思想を顕在化させる出来事をしでかしている。古くて新しいお話、なのだ。竹中を、政権べったりで財を成したことから「現代の政商」などど評する向きもあるが、彼はそんな玉ではない。国民を馬鹿だと規定し、政府要人も馬鹿扱いし、そう発言している自分自身が最も馬鹿であると言うことにまったく気付いていない馬鹿、これが竹中。ああ、ややこしい。


パソナグループ 最高益


 竹中平蔵が取締役会長を勤めるパソナグループの、2021年5月期連結営業利益は過去最高益となる、純利益では昨年対比10倍強になる見込みである、と報道されている。

『日刊ゲンダイDigital』(6/5)

 〔見出し〕政権べったりの「パソナ」過去最高の営業利益
      五輪とコロナで荒稼ぎの不公平感
 〔本文〕
 現在、兵庫県・淡路島に新社屋建設中で、東京・大手町の本社に勤務する7割近い1200人を、2024年5月までに移転させることを発表している大手人材派遣会社のパソナグループ。先月、2021年5月期の業績を当初予想から上方修正した。
 パソナは「東京2020オフィシャルパートナー」。つまり東京五輪の大会スポンサーであり、大会運営業務を受託している。東京五輪・パラリンピックの選手村や競技会場などの運営に当たるスタッフの派遣を担うが、5月26日の衆議院文部科学委員会で、大手広告代理店の東急エージェンシーが締結した業務委託契約書によると、運営スタッフ1人あたりに支払われる日当が最高で35万円、管理費・経費を入れて42万円で受託していることが発覚。実際に支払われる日当との差額が大きく、大幅な中抜きが指摘されている。
 今期のパソナは、売上高3300億円、営業利益175億円、純利益62億円と、前回予想より売上高は1.2%の伸びだが、本業の儲けを表す営業利益は過去最高に。さらに、純利益は31.9%増(前回予想比)で、20年5月期は一部固定資産の減損を計上していたとはいえ、前期比で10倍以上の伸びを見込む。


 この記事が言うように「竹中平蔵 = パソナグループ」は、「政権べったり」で「大幅な中抜き」を常套手段としていることから、あちこちで「現代の政商」などと揶揄されている。事実その通りなので非難・糾弾されて然るべきだが、些細な言葉遣いに拘るならば、この「政商」という比喩は少しおかしい。正鵠を射たものであるとは思えない。
 かって「政商」と呼ばれた人たちの名誉のためにも、「竹中平蔵 = パソナグループ」は「政商」と呼ばれるに値しない存在であることを、まづ確認しておこう。




竹中平蔵は「政商」と呼びうるか?


 「政商」という言葉を初めて使ったのは、山路愛山(1864〜1917)だと言われている。

 彼によれば政商とは、「明治の初期にその時代が作りたる、特別の時節に出来たる、特別の階級」である。― ― 山路愛山『現代金権史』
 もちろん私は、明治・大正期の思想家の著作を熱心に読むような勉強家ではないから、ちょっとネット検索をしてみただけのことなのだが、幸いにも、ほんの数行であるが愛山の文章を発見した。『平凡社世界大百科事典』からの引用である。

 最初の明治政府、ことにその中心の人格たる岩倉、大久保諸公が国家自ら主動の位置を取りて民業に干渉し、人民の進まぬ前に国家先ず進み、世話焼と鞭撻と、奨励と保護とを以て一日も早く、日本国を西洋の様に致したしと……しきりに人民の尻をたたき立てり。さてかように政府が自ら干渉して民業の発達を計るに連れておのずからできたる人民の一階級あり。

 「世話焼」という言葉が使われているから多少の皮肉は込められているもしれないが、ここでは「政商」は決して否定的な意味で用いられてはいない。逆である。明治初期における、殖産興業・富国強兵という国家的課題を、民間資本の自発的発展に任せておくことなく、岩倉具視や大久保利通など、政府の要人が自らの手を染めてそれを実行した。その時に成立した「人民の一階級」が「政商」である、と言うのだ。
 歴史の本をめくってみると、政商としてその名があげられているのは、三野村利左衛門岩崎弥太郎渋沢栄一五代友厚安田善次郎、などの人物である。なるほど、政府要人に近しくはあるが、矩を踰えず、きちんと政権とは距離を保った人たちであったことが分かる。何よりも大事な要点は、確かに財を成した人たちではあるが、それは、殖産興業・富国強兵という国家的課題における実業によってである、ということである。もしそうでないならば、渋沢が大河ドラマの主人公になることはなかったであろう。

 「竹中平蔵 = パソナグループ」は、これらの「政商」とは決定的に違う。竹中平蔵は、国家的大義・道義の一欠片も持ち合わせてはいない。ただ単に、政権の無知・無能・無策につけこみ、政策もどきを請け負うという「虚業」で暴利を貪っているだけ。例える言葉を探すなら、昔の遊郭における「女衒」(ぜげん)、山谷・釜ヶ崎の「手配師」、あるいはそれ以下の存在ではないか。彼をモデルにドラマを作ってみても、三流の企業犯罪モノにしかならないだろう。エンディングは黒幕の逮捕と組織の自壊。面白くも何ともない。一話で打ち切り必定。


世論が間違ってますよ。世論はしょっちゅう間違いますよ。


 さて、この竹中平蔵、貴重な国家資産をさんざん濡れ手で粟と取り込んで、七十古稀にまで達したのだから、爺ぃは爺ぃらしく大人しく渋茶でもすすっておればよいものを、浮かれてなのか焦ってなのかは分からぬが、お仲間たちの集うテレビ番組を賑やかし、彼らの真似をして動画サイトにチャンネル登録したりして、言わなくても良いことを言って叩かれ、余計な言い訳を繰りかえしてまた叩かれている。
 百田とか、高須とか、DHCとか、アパホテルとかの、爺ぃたちが言うことなら、民間人の他愛ない戯言、笑止千万と済ますことも出来ようが、竹中平蔵となるとそうは行かない。彼は、小泉純一郎が首相になって以来、一貫して、政府・自民党の一極集中的ブレーン(brain trust)だったはずだ。言うまでもない事だが、 "brain" とは「脳みそ」 "trust" とは「信頼」の意である。
 特に看過できないのは「世論が間違ってますよ。世論はしょっちゅう間違いますよ」という発言である。

【朝日新聞デジタル】(2021/06/07)

 〔見出し〕「世論が間違ってますよ」竹中平蔵氏、五輪中止論を批判
 〔本文〕
 竹中平蔵元総務相(現・パソナ会長)が6日の読売テレビの番組「そこまで言って委員会NP」で、東京五輪の中止や再延期を求める世論が高まっていることに関連し、「世論が間違ってますよ。世論はしょっちゅう間違いますよ」などと発言した。
 ……
 五輪の中止などを求める世論の背景として、番組で出演者の一人が「国民は緊急事態宣言によってやりたいこともできない、お店も閉めなきゃいけないと我慢しているから、みんな怒っている」と指摘。これに対し、竹中氏は「我慢しなきゃしかたない。
それだったらコロナ菌に怒ればいいじゃない」と述べた。
 竹中氏はその後、「『世論は間違え』とはちょっときついかもしれないけれど、やっぱりうつろいやすい」と修正した。


 この竹中発言を、世良公則さんが "twitter" でこう批判している。

  政府の水際・経済対策の甘さで国民が困窮しているのにこの発言
  呆れる
  竹中氏、あなたは基本的に間違っている
  
コロナは菌では無くウイルスだ

 竹中平蔵の思考能力・言語能力の劣悪性を、一言で射貫いて見事である。

 言葉の正確さはとても大切。政治家ならば尚更のこと。世良さんは「コロナ菌」という表現の決定的誤謬を端的に指摘しているが、私は「世論」という言葉にネチネチとこだわってみよう。

 竹中は、しらっと、世論が間違ってます …… 、と言う。
 じゃあ、訊こう、
 「世論」とは、いったい何かね、竹中君?


「世論」とは何か?


 世論、とは何か?
 気安く、世論、世論、と言うが、それなら、これが世論だ、と言うものを、ここに差し出してみたまへ。世論をきちんと定義してみろ、竹中。出来ないだろう、お前。

 実際、「世論」というものは捕らえどころのないものである …… 。
 誰も彼もが「世論」を引き合いに出して議論するが、どうもこの「世論」には胡散臭い感じが付きまとう …… 。
 何か晴れがましい国家的イベントがあれば、内閣支持率が上がり、株価まで上昇する。逆に、政府要人の不用意な発言が続けば、内閣支持率は下がり、株価も下落する。政府・内閣の中味、政策は何一つ変わっていないのに。何だ、世論とは。秋の天気? 風の中の羽根?

 おそらく国民の誰もが、この様な実感を持っているだろう。
 だが、それで良いのだ。それが世論と言うものの現象のしかたであり、その曖昧さこそ議会制民主主義の維持を根本において担保している。そうだろう、考えてもみたまへ。

 政府の政策・方針に反対する者は、「世論を無視するのか」という言辞でもって政権に迫る
 もしそれが出来ないとするなら、反対者は、筵旗(むしろばた)・赤旗を振りかざし、角材・竹槍を握って国会・首相官邸に向かうしか方法は無い。


 与党・政府の内部では、「政権支持率という世論」を最大の論拠として、会合やら根回しやらで、党の総裁や総理大臣を選出する
 もしそれが出来ないとするなら、派閥と派閥は、軍隊を巻き込んでのクーデター合戦をおっ始めるだろう。


 つまり、捕らえどころの無い「世論」が尊重されているからこそ、議会制民主主義は破綻なく機能している。竹中は批判を受けて「世論は、 …… やっぱりうつろいやすい」と修正した と言うが、世論はうつろいやすいと言う現象の底に、民主主義の維持という重石(おもし)をしっかりと保持しているのだ。

 竹中の発言は、この「世論と議会制民主主義との相互関係」を根本から否定するものである。多くの人たちが火が付いたように怒るのは当然のことで、それは、彼らが議会制民主主義の健全な存続を信じていることの確固とした証左である。
 ならば、与党・政府の方から竹中批判の声があがらぬのは、まこと奇っ怪なこと、と言わねばならない。彼ら彼女らの沈黙、無視、あるいは無関心は、与党・政府における民主主義精神の喪失を如実に物語ってはいないだろうか。彼ら彼女らは、すでに、ファシズム的政治力学に馴染んでしまっているのかもしれない。 …… 世論がどうしたと言うのだ、世論などどうにでもなる、世論など無視してしまえば良い、世論など馬鹿な民衆の戯言にすぎない、 …… etc. etc.


2005年(平成17年) 『郵政民営化ってそうだったんだ通信』


 もう少し、話を掘り下げてみよう。
 寄席の大切りではないが、「竹中平蔵と世論」というお題が出れば、真っ先に、ハーイ! と手を上げて答えることになる出来事があった。いささか古い話になるので、忘れておられる方も多いと思うのだが …… 、
 そう、あれ、です。2005年(平成17年)郵政民営化で国会が紛糾した、あの時の話です。

 2005年の2月20日、『郵政民営化ってそうだったんだ通信』と題する政府広報が、新聞に折り込まれて全国に配布された。その数、1500万部。これは竹中平蔵が仕組んだ策略であった。彼は当時、第二次小泉純一郎内閣で創設されたばかりの郵政民営化担当大臣の、初代担当大臣としてその職にあった。その竹中平蔵にテリー伊藤が質問するという体裁のチラシである。

 その3年前の2002年、『経済ってそういうことだったのか会議』(日経ビジネス人文庫)という本が出版されている。電通出身「広告クリエーターの佐藤雅彦」が質問し、それに「気鋭の経済学者竹中平蔵」が答える、という体裁をとった書物である。この標題の類似性から見ても、『郵政民営化ってそうだったんだ通信』は、竹中の主導で進められた企画であった事が容易に想像できる。
 さて、その『郵政民営化ってそうだったんだ通信』である。いくら画像検索してみても現物がヒットしなかったのであるが、幸い、企画時のラフ・スケッチが見つかった。竹中と伊藤の御姿がデザインされていたようなので、そのスケッチに二人の写真を貼り付けてみた。こんな感じののチラシが各戸配布された訳である。



 竹中さん、郵政民営化って 僕にもよくわからんのよ ちゃんと説明してよ
 喜んで!! 郵政民営化って わたしたちの 街と暮らしを 元気にする そのためのもの。
 えっ!! それ、おもしろそう もっと詳しく 聞きたいな


 ええ歳こいたオッサン二人が、出来の悪い幼児むけ絵本みたいな会話をしてます。
 ちゃんと説明してよ とか、
 えっ!! それ、おもしろそう もっと詳しく 聞きたいな
 とか、
 現実の世界で、この様な言葉遣いをする人はいないだろう。架空の疑似幼児語である。

 極めて政治的なテーマを解説しようとする冊子であるにも関わらず、子供・幼児向け絵本かと見紛うばかりの文体で表装されている。この点に注意していただきたい。後述しますが、これが冊子の本質なのです。つまり国民を幼児扱いしている。ここから、竹中が国民と世論というものをどう認識しているか、が透けて見える。

 ただし今は、郵政民営化とは何かという本筋には立ち入りません。
 ただ、このチラシの製作に関わる、竹中の「広報疑惑」には少しだけ触れておきます。
 このチラシの製作を請け負ったのが「スリード」という会社。2004年の3月に設立されたばかりの有限会社。政令では 160万円以上の物品契約は競争入札が原則となっているのに、このスリードが、1億5614万円で「随意契約」している。竹中の息のかかったペーパーカンパニーであることは明白。国会でも当時の民主党が追及しているが、アッサリ逃げ切られてしまっている。その詳細を確かめたいと思われる向きには、当時の『サンデー毎日』の記事があるので読んでみてください。
 あれあれ、ごく最近も、アベノマスクとか、接触確認アプリ COCOAとか、その他諸々の発注で、まったく同じことを繰りかえしてますね。野党は何をしとるのか!! まったく、もう。


有限会社 スリード って、何よ?


 さて、ここからが今回の核心部分である。
 このスリードという会社、2004年の年末から2005年の年明けにかけて、政府のお歴々に対して、『郵政民営化ってそうだったんだ通信』の作成・配布に関するプレゼンを実行している。実は、その資料が流出して、今でもネットのあちこちに散在しているのだ。主な内容は共通しているが、私が確認した限り2件の「表紙」がある。もちろん標題は違うが、1件めには宛先が明記されていない。

1)
     『郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案)』
     2004年12月15日
     有限会社 スリード
     株式会社 オフィスサンサーラ
2)
 内閣府 政府広報室
     郵政民営化準備室 御中
     『郵政民営化フライヤー戦略』
     2005年 1月12日
     有限会社 スリード
     谷?

 流れから見て、1)2004年12月15日に『郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略(案)』の提案が行われ、それが承認された後、翌2004年12月15日に、ではこの書面・文面で行きましょうと、2)『郵政民営化フライヤー戦略』が提案された、と想像できる。ちなみに「フライヤー(flyer)」とは「折り込みチラシ」のことを云う業界用語で、もともと、その名の通り、飛行機から撒いた宣伝ビラのことである。先に示した、竹中平蔵・テリー伊藤の「ええ歳こいたオッサン二人」のラフデザインは、このフライヤーのデザイン案であると思われる。

 さて、この二回のプレゼンに共通に使われている紙面から、次の2枚を点検してみる。
 原本はモノクロであるが、オレンジの書き込みは私が書き込んだもの
 ふーむ、まったくもって、非道い内容ではないか …… 。


我々は、みんな「B層」なんだって。


 1枚目は、マーケティング企画屋が好んで使う「ポートフォリオ・チャート」である。



 このチャートは、郵政民営化を情宣する対象をターゲットとして区分しようとしている。

 横軸は、(右に)構造改革に肯定的な層、(左に)構造改革に否定的な層、という対照軸している。まあ、これは良いだろう。だが、縦軸が非道い。
 我が目を疑ったのだが、縦軸は「IQ軸(EQ,ITQ)」に設定されていて
   (上)は "High"
   (下)は "Low"   となっている。
 つまり、チャートの下へ行くほど、国民が「頭の悪いヤツ・バカ」に分類されているのだ。

 さらに驚かされるのは、
 「構造改革には肯定的である」が「頭の悪いヤツ・バカ」のグループを「B層」とし、この「B層」こそが「小泉内閣支持層」だと明言していることだ。

 甚だしく国民を愚弄した表現であるが、それが貴方たちの支持層なのですと説明されて、うん成る程、と納得した政府要人どもは、もっと本質的に「頭の悪いヤツ・バカ」であったに相違ない。その場には小泉もいたのだろうか?

 これが竹中平蔵という人物なのである。国民を馬鹿だと規定し、政府要人も馬鹿扱いし、そう発言している自分自身が最も馬鹿であると言うことにまったく気付いていない馬鹿。ああ、ややこしい。


ターゲットB層には、チラシ戦略!


 2枚目のチャート図は、だからどうするのか、という具体論を書いている。



 「B層」というターゲットは、難しい文書は読まないし、ネットやスマホも使えない。では、どうするのか? そう、そうだ、スーパーやホーム・センターのチラシ程度なら目を通すだろう。あれだ、あれで行こう。しかし、説教・説法はダメだぞ。「B層」に馴染みのキャラクターを使って、質問させろ。それも、易しく、そして、優しくだ。ジャニーズ? AKB? 馬鹿を言え、それではあまりにも場違いだ。スナック菓子の宣伝じゃないんだ。もっと、どう言うか …… 、そう、モノの分かっていそうな年配者を使え。テリー伊藤なんかどうだろう。何が言いたいのか良く分からぬが、うまく屁理屈をこねるし、市販の辣韮(らっきょう)が甘すぎるなんて怒っているくらいだから、違いの分かる男と思われているだろう。およそ女性スキャンダルとは縁遠い風貌だし、ヤクなんかとも無縁な感じだ。良いんじゃない、伊藤。彼で行こう。
 
 と、まぁ、こんな芸能記者風の戯言を、チャートにまとめただけの1枚である。
 こんな、無内容・無思想・無節操なチラシ配布に。政府は 1億5614万円 も支払っているのだ。


竹中には国民が見えていない


 もうこれで、竹中平蔵という人物の度しがたいまでの本質が、十二分にご理解いただけたと思う。
 彼は国民を馬鹿だと見なしている。
 世論、つまりその馬鹿な国民がぼんやりと夢想することなど、プロパガンダ一つでどうにでも操作できると信じている。
 また政府の要人たちにも、そう信じ込ませてきた。小泉純一郎の「ワンフレーズ政治」や、安倍晋三の「マリオ扮装」や「桜を見る会」偏重などは、その正直な実現形態である。

 そして今、世論がオリンピック延期・中心に傾いているのは、反政府勢力がそのように煽っているからだと、彼は信じている。だから「世論が間違ってますよ。世論はしょっちゅう間違いますよ」などと平気でいえるのだ。あれは彼の失言ではない。彼は本当にそう信じているのだ。

 国民は、自分の日常生活の中で、自分の判断をしている。
 竹中には、それが見えていない。



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